第二十四話 秘匿情報
「で、何を聞きたいの?」
環先輩が徹を見る。部屋の中に静寂が訪れる。窓から入ってきた風が環先輩の髪を撫でる。
(何を聞く…。)
正直聞きたいことは山ほどある。
だがきっとそれは今聞くべきことじゃない気がする。
「なぜ俺なんですか?」
一番最初に聞きたいのはやはりこれだ。そもそもなぜ連れてこられたのか。
「それは君を教師にしたくないからだよ。」
「なぜそこまでして俺を祈守にしたいんですか?」
「君が僕と一緒だからだよ。」
「一緒?」
訳がわからなかった。似ても似つかないような存在だと思っていた。
どこがどう一緒なのか、徹には微塵もわからなかった。
「徹くんさ、結晶の管理とかしたくないんでしょ?」
「そうですね。」
「僕もそうだったよ。仕事とはいえ殺すとかほんとむりだよね。」
「今は違うんでしょうか?」
「どうだろう?もうそんなこと気にすることないからね。」
環先輩は疲れたような笑みを浮かべる。
何だかいつもと少し雰囲気が違うような気がした。
「俺にそうなって欲しいんですか?」
「逆だよ。僕はできればなって欲しくないんだ。」
「じゃあなぜ…。」
「矛盾だよね。でも君の本性がそうなんだよ。」
言っていることの意味がわからない。この人は徹の何を知っているのだろうか。
「僕は君の想像よりも君のことを知ってるんよ。」
「何を知ってるんですか?」
「それは言えないんだ。ごめんね。」
少し悲しそうな顔をして環先輩は笑う。
何だかいたたまれない感覚になってきた。
徹が目を背けて外をちらりとみる。日はすっかり落ちていて、あたりは静寂に包まれていた。
環先輩が一度手を叩き話を変える。
「他には何かない?」
「環先輩の力は何ですか?」
「僕の力か…。」
少し考えるような顔をする。
「な、何だと思う?」
「教えてはくれないんですか?」
「一応国家機密くらいなものだから。」
(ほんとに何者なんだ?)
教えるのを渋っていた理由もわかる。
「瞬間移動とかですか?」
「瞬間移動…それもそうかもしれないね。」
何だか曖昧な返答をされる。
「何でも教えてくれるって言ってたのに…。」
「ごめんね。これは予想外だったんだよ。」
以外とこう言うことは抜けているらしい。少し親近感が湧いた。
「後もう一ついいですか?」
「なになに?」
「あの門はなんですか?なんで禁忌を知っていたんですか?」
「石の門のことだね。」
ちょっと待ってね、と言って机の引き出しを開けて何かを取り出す。
徹の前に置かれたそれは、古めかしい本だった。
かなり昔のものらしく綴じられているところがほつれている。
タイトルがあるはずの部分には何かで削られた跡があった。
「これは?」
「これは『無題の物語』って言うんだよ。」
『無題の物語』と言われたそれは不思議な魅力を放っていた。
これが読めたら全てがわかる。そんなえもいえぬ気持ちが湧き上がってくる。
「この国の中で最も古い書物って言われてるんだよ。著者も不明でたまに未来のこととか書かれてるんだ。」
「存在は秘匿系のやつでしょうか?」
「そうだね。その複製版は限られた人しか持てないよ。」
(ほんとにこの人何者だ?)
ただ、今は本が読みたくてそんなことどうでも良かった。
その様子を察してか「読んでいいよ。」と環先輩はいう。
慎重にページを捲る。複製とは言え破ったら大変だ。
手書きの物語は読みやすい文字で書いてあった。
「詩みたいですね。」
「そうだよね。」
徹は夢中になって本を読む。
わからない、読めないところがあったら環先輩に聞いて本を読んでいった。
第一章 はじまりの国
昔々あるところに小さな国がありました。
その国の人々は、長生きできない呪いにかかっていました。
ある民が長生きできるように神様にお祈りを捧げました。
それは次第に広まっていき、国の民は神様に祈りを捧げるようになりました。
そうして祈りは神様に届き、民に長い命を、最初に祈りを捧げたものには重要な役目を与えました。
めでたしめでたし。




