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しあわせの芥  作者: 柊春三
第一章 学園編
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第二話 寮

「じゃあ愛しの新居に帰りますか、徹くん。」


そうやって徹の背中を押して行くのは来火狐丸。新入生が二人しかいないため寂しいのか知らないが、何をするにもついてくる。


「何が愛しの新居だ。ただの寮だろ?」

「そうだけどさ〜。おれ一人暮らし初めてだし愛着湧きまくり!そういう徹は一人暮らし初めてじゃないのさ?」

「...まあ、過去にしたことはある...はず。」

「歯切れ悪っ!」


来火はやけに大きなリアクションで後ろにのけぞる。

ため息を吐きながら来火をみる。


「しょうがないだろ。幼少期の記憶って薄れて行くもんなんだから。」

「うーん、諦めいいんか知らねえけどおれそういうやつ嫌いじゃないね。」

「そりゃどうも。」

「ん?幼少期に一人暮らし?」



そうして二人は寮まで話しながら進んでいった。










「思ったより遠くないか?」

「え!?もう25分も歩いてる!?遠すぎだって!」


寮とは少し近いと思っていたがかなり遠くにあるようだ。

山の上の校舎から少しずつ降って行くがなかなか辿りつかない。

少し注意して見ないと見失ってしまいそうな山道を歩く。周りはかなり高い木に囲まれており、いい景色を望むことも難しい。たまに白い花が咲いているくらいで大して景色は変わらず、どれぐらい進んでいるか分からない。


「これなら学校に住み着こうかな...。」


来火が血迷い始めたところで建物が見えてきた。

かなり古びていて外壁には蔦がまとわりついてる。

入り口の上に掲げてある木の板にはかすれた文字で『はくもん荘』と書いてある。

二人してまじまじと建物を見ていたら中から年配の女性が出てきた。


「あらまあ、新入生かね?私はここの寮母だよ。わからないことがあったら何でも聞いておくれ。」

「桃瀬徹です。よろしくお願いします。」

「来火狐丸です!よろしくお願いします!」

「徹ちゃんと狐丸ちゃんね。よろしくね。」

「あ、おれのことは来火って呼んでください。」


この謎のこだわりは何なんだろう?と首を傾げる。

寮母は少し不思議そうな顔で来火にいう。


「『役名』で呼んでほしいのかい?不思議な子だねぇ。」



ここコウの国では名前は、『役名』と『真名』で構成されてる。基本的に人々は真名で呼び合い、格式高い場などでは役名で呼び合うことがあるくらいだ。

役名で呼んでほしいという人は、よほどの変人か自分の役割に過剰なほどの自信を持っている人ばかりだ。



(不思議なやつ)


まあそんなこと考えても徹にはわからないことだ、と胸の内にしまった。


「はい、これが鍵だよ。無くさないようにね。」

「「ありがとうございます。」」


そう言って徹たちは部屋に向かった。






「いやーまさか部屋まで隣だったとは。」


荷解きを終えた徹たちは、一階にある食堂へと向かっていた。

寮ということもあって少し心構えしていたが、隣人問題についてはなんとかなりそうだ。


「にしても4階建って。他に誰か住んでんのか?」

「先生たちと一緒らしい。」

「先輩は?」

「わかんない。でも一個上は全滅らしい。」


全滅か。いないではなく全滅とは。

どういう意味なんだ?


(元々いない場合はそんな言い方しないよな?)


何かしらで命を失う可能性があるのだろうか。

来火に聞く手もあるが、あまり深追いしない方が良さそうなので特に詮索はしないでおく。


「はー、お腹減った。」


そう言いながら腹をさすりながら食堂へ向かう。

食堂についたあとは、寮母の手伝いで献立を席まで運んでいた。

思ったより食堂は広く大きな卓子が二つ置いてある。


「全員で食べるんだな。」

「らしいね。今いる人数より多いし。」


確かに多い。二つある大きな卓子のうち、一個分はもう埋まりそうだ。


(誰が住んでるのやら。)


そんなことを考えながら夕食のカレーを運ぶ。温かくて美味しそうだ。

美味しい湯気を顔一杯に浴びていたら、涎が出てきそうになる。

こっそり先に食べれないか考えてると玄関の方で音がして、誰かが駆け足で入ってきた。


「寮母さん、帰還しました。すみませんが一食分増やしてもらうことは可能でしょうか?」


そう言いながら食堂へ入ってきたのは、7歳ほどの男の子だった。


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