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第十八話 石守の仕事

環くんの口調変更します。

翌日は夜更かしをしたというのにやけに早く起きれた。

体が軽く、頭がやけに冴えている。

床で寝て居る来火はまだ眠りこけて居る。


(いつもは俺より早起きなのに。)


不思議な達成感を感じながら着替える。寝巻き洗濯カゴに入れ、寮母のもとに持っていく。


「おはよう。今日は早起きねえ。」

「なんか目が覚めちゃって。」

「いいじゃない、いいじゃない。早起きは三文の徳っていうところもあるしね。」

「そうなんですね。」


何気ない会話を交わして部屋に戻る。

部屋に戻ってもまだ来火は眠っていた。時計を見るともうそろそろ起きなければならない時間だ。


「来火、起きろ。」


呼びかけても起きる気配はない。


(人なんて起こしたことないのに。)


体を揺さぶっても肩を叩いても起きる気配はない。


(死んでる?)


心臓は確かに動いているようだ。

鼻がピクピクと動く。気になって鼻をつまんでみた。


「ふごっ。」


と音がして来火が飛び起きる。

それに驚いた徹は尻物をついた。


「何すんだよ!」

「おはよう。寝坊の時間までよく寝てたようだから。」


はっと来火が時計を見る。もう少しで朝ごはんに遅刻しそうな時間だ。


「やっばい。起こしてくれてありがとな!」


そう言って来火は走って自分の部屋に戻って行った。


「ちゃんとお礼は言うんだな。」



その後の朝食には来火はちょっと遅刻した。







「じゃあ出発しようか。」

「わかりました。」


寮の住民がほとんど出払ってから、徹たちは出発した。


「ちょっと遠いけど大丈夫?」

「大丈夫です。」


ここのところ学園外に出ていない徹はワクワクしていた。


学園のある山を降りて小さな集落へ出る。その集落を横切って森の中に入って行く。


「森の中にあるんですか?」

「ううん、谷の下だよ。」


(谷なんて見当たらないが?)


そのまま森を突っ切って行く。


「本当にちょっと遠くまで行くだけですか?」

「そうだよ。」


(嘘だ。絶対嘘。)




そうして二つ山を超えたあたりで環先輩は立ち止まった。


「一旦休憩しようか。」

「ありがとうございます。」


散々学園で走ったと思ったが、山道となると勝手が違うようで息が上がっていた。


徹は立ち止まって水を飲みながら辺りを見渡す。

大きな滝がありその横には石の門のようなものがあった。

少し近づいてみる。門には細かな彫刻が施されていたが、長年管理されていないのか間に砂が入っていたり落ち葉や何かしらの死骸が落ちていた。


(だいぶ古いものだ。)


石の門に触ってみる。ひんやりしているが手に砂の粒がつく。

砂のついた粒を払っていると後ろに環先輩が立っていた。


「これは何ですか?」

「これは、石の門だね。」

「そのままの名前なんですね。」

「あ、本当の名前は別にあるよ。軽率に口に出しちゃいけないんだ。」

「そうなんですか。」

「でも徹くんなら僕教えるよ。機密情報だけど。」

「いえ、そんな大層なものは俺には背負いきれません。」

「そっか。」


少し環先輩の顔がしょんぼりしているように見えて。


(軽率に口に出せないの門か。)


何かの禁忌に触れるようなものなのだろうか?と言うかそもそも触っても良かったのか。

環先輩は何も言わなかったから触るくらいは許されているのだろう。


「じゃあ、そろそろ行こっか。」

「あ、わかりました。」


環先輩の後ろを追いかけるようにして荷物を持って出発する。

徹は追いかけながら先ほどの門について考える。

名前すら機密情報になる石の門。


「徹くん?立ち止まってどうしたの?」

「…あ、すみません。」


(何で、その門の名前を環先輩は教えられるんだ?)


しかも”徹くんなら“と言う前置きありで言ってきた。


(何者だ?)


環先輩はどう見ても怪しい。きっと身分を偽っているか、どこから情報を盗んだかだ。

だが、きっとこんなこと考えても碌でもないことにしかならないのを徹は知っている。だから言及することもなく考えるのをやめた。



しばらく歩くと大きな岩があった。


「でっかい。」

「ね、大きいよね。」


そう言って環は首元から首飾りを出す。

岩に首飾りを近づけると入り口が現れた。


「おおおおおおお!!」

「すごいでしょう。」

「これは誰の力なんですか?」

「これは石型の祈りの結晶だよ。」

「初めて見た…。」


そうしてしばらく入り口で石を眺めている。


(石というより岩じゃないか?)


そんなしょうもないことを考えていたら、中からドタドタと足音が近づいてきた。


「環!」

「わあ。ただいま。」


環先輩の頭に飛び乗ったのは小さな少女だった。


「おかえりなさーい。って何こいつ。」

「この子は徹くんだよ。」

「こんにちは。桃瀬徹です。」


少女は上から下までまじまじと徹を見る。







「あたしあんたのこと嫌いだね。」

「へ?」

「あらら。」

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