第十五話 楽しい食卓
「さあ召し上がれ。」
「相変わらずうまそうだな!」
そうして珍しく一緒に食卓を囲んでいるのは大鷹という男だ。
来火が帰ってきた時な一緒にいて、ついでに夕飯を食べることになった。
「ん〜。うまいな!」
「あらあら、相変わらず大鷹ちゃんはリアクションが大きくて見応えがあるわねぇ。」
「残念だがおばちゃん、もうちゃんの歳じゃないぜ。」
「あたしからしたらいつまでも大鷹ちゃんよ。」
ほのぼのとした会話をしている二人を見ながら徹は夕飯を食べる。
大鷹のリアクションも納得の味だった。
「で、そっちのツノ坊は?」
「ツノ坊...。」
「いいじゃねえか。おれなんてチビだぜ?」
「桃瀬徹です。よろしくお願いします大鷹先輩。」
「先輩やめろ。」
「ならツノ坊やめてください。」
「...そのままで。」
そんなに名前で呼びたくないのか。
少し呆れながら夕飯を書き込む。
「今日はなんだったんだ?」
「熊だな。」
「違和感は?」
「肩にでけえ結晶みたいなんがくっついてた。ありゃ人工かもしれん。」
よくわからないが何か深刻な話をしている。
来火は何か覚えがあるようで一瞬ハッとした表情になった。
「環はきてたか?」
「気づいたらいたよ。あいつの移動能力はよくわかんねえ。」
「同感だ。」
その時徹の横を生暖かい風が通った気がした。
風が流れた方を見ると、一人の男が立っていた。
大男というほどではないがかなり大きな男だった。
徹の目線に気づいた男は笑顔でこちらに手を振る。
固まってる徹に気づいた来火は視線の先を見て声を上げた。
「環先輩!?」
「環?」
後ろを見た皆が驚いているところに環先輩が話す。
「あれ、見つかっちゃった。」
ふふっと笑い徹を見る。
徹は背筋に冷たいものが走った気がして、つい目を逸らしてしまった。
「君名前は?」
「も、桃瀬徹です。」
「徹くんね。仲良くしようね。」
環先輩はそう言って手を差し出す徹は恐る恐るその手を握った。
満足げな顔で環先輩が握手をする。
その時ドアが開いて一人の女性が入ってきた。
「環!また逃げ出しましたわね!」
「イザベラ先輩!」
「イザベラ先輩...?」
なんかどこかで聞いたような。
「あ、恵先生の後輩って言ってた。」
「そうだ。」
「自慢の後輩さんですよね。」
「「自慢の後輩…!?」」
環先輩とイザベラ先輩は顔を見合わせていた。
瞬きをして呆然とする二人。
「え〜と、これは事実ですか?」
「ああ、そうだな。」
イザベラ先輩が立ち上がる。
「環、聞きましたか?私たちのことを自慢の後輩って…。」
「聞いたよ。やったね。」
大興奮のイザベラ先輩。反対に落ち着いてにこやかに答える環先輩。
(思ってた感じと正反対だな。)
思ったよりイザベラ先輩は感情が豊かのようだ。
対して環先輩の落ち着きにはどこか恐怖さえ感じる。
騒いでる先輩たちを見ていたら、遅れてカスミ先生がやってきた。
「遅れてごめんなさい。あら、大鷹来てたの?」
「邪魔してるぞ。」
「迷惑はかけちゃダメよ。」
「カスミ姐さま、お久しぶりです。」
「こんばんは。」
「イザベラに環。久しぶりね。」
先生たちは久しぶりだったらしく楽しく会話に花を咲かせている。
徹と来火は聞いていてもよくわからないので黙々と食事を終え、食器を返して席に戻る。
「お前なんか知ってる?」
「…名前くらいしか知んない。」
来火があからさまに目を逸らす。
(わかりやすい。)
でも誰の何を隠しているかわからない。
なので少しカマをかけることにする。
「環先輩についてなんか知ってるだろ?」
「!?」
来火が目を見開いてこちらを見る。
(あたりか。)
一番よくわからなかった人だし隠すのにも何かしら理由はあるのだろう。
徹が勝手に納得していると
「な、な、何で…」
驚いた顔で来火が聞いてくる。
「...ひみつ。」
「なんだよそれ。」
(なんかカマかけたことに罪悪感が...。)
そんな会話をしながら二人はテーブルに戻った。
席に着いた時、何やら別の話題に変わっているようだ。
「だからなぜそうなる!」
「恵くん落ち着いてください。」
「環!あなたはもう少し言い方を考えてくださいまし。」
「今のじゃ、ダメかな。」
「まあまあ、本人も帰ってきたところだしいったん聞いてみましょう。」
何やら徹か来火のことで揉めていたらしい。
(実戦のこともあるし来火についてだろうな。)
そうして来火の方を見ると来火もこちら側を向いていた。
(ん?)
「早く話してやれ。」
「了解。僕は徹くんに話があるんだ。」
「へ?俺ですか?」
「君以外徹くんはここにいないでしょ?」
「そうですけど...。なんでまた?」
「徹くん、数日僕付きになってよ。」
「へ?」