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しあわせの芥  作者: 柊春希
第一章 学園編
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第十三話 緊張

「こ、殺される?」

「そうだよ。」


環は細めたままの目でそう答えた。

イザベラと大鷹は俯いていた。


「女の子は、生物学的にも男の子より身体能力が低いでしょ?だから、逃げ遅れて殺されちゃう子が多いんだ。」


淡々と衝撃の事実を伝える環。


「殺されるって...誰にですか?」

「ここの国ではありませんわ。他国の連中です。」


イザベラが答える。思い出したかのように大鷹が話に入る。


「そういえば、イザベラも他国出身だったな。」

「あんな蛮族と一緒にしないでくださいまし。」


そうしてプイッとイザベラはそっぽを向いた。


「な、何で殺しにくるんですか?おれたち何にも悪いことしてないですよね?」

「きっと怖いんだよ。」

「怖い?」

「結晶ってね、コウの国にしかいないんだよ。」

「だから私たちの力を危惧してるのでしょうね。強い方はそこいらの軍を単騎で潰せるぐらいですもの。」

「恵先輩とかね。」


(知らないことばっかりだ。)


来火は初めて聞くことを必死に頭に入れる。自然と体に力が入る。


「あ、君え〜と。」

「来火狐丸だ。」

「狐丸くん目の色変わっちゃってるよ。」

「え?」


急いで手で目を隠す。イザベラが手鏡を貸してくれたのでそれを使うと、瞳が金色に輝いていた。


「えええ?なんで?!」

「緊張や頭使ったら力の片鱗が見えることがあるらしい。チビはそれかもな。」

「緊張してたの?かわいい〜。」

「こら環!そんなことあんまり言うものじゃないですわ。」


己の状態が目で表れていることがわかって来火は恥ずかしくなった。


「狐丸くん耳赤いよ。大丈夫?」

「やめなさい!狐丸くんごめんなさいね。」

「あ、はい...。大丈夫です。あと...来火って呼んでください。」

「わかりましたわ。」

「了解だよ〜。」


ニコニコ笑う環と微笑むイザベラを見て来火は少し落ち着いた。

環が一歩来火に近づく。


「来火くん、仲良くしようね。」

「よろしくお願いします、環先輩。」


環が手を出す。来火はその手を強く握り握手を交わした。

手を握られた環は少し驚いた顔をしたが、次の瞬間にはその顔は満面の笑みに変わった。


「ありがとう。」

「満足したかしら?」

「うん!」

「それでは大鷹さん来火くん迷惑をかけました。すぐ帰りますわ。」

「ばいば〜い。」


そう言ってイザベラと環は森を後にした。


「あ、嵐みたいな人たちだ。」


二人のキャラの濃さと情報量の多さで来火は疲れ切っていた。

するとその肩を大鷹が叩いた。

疲れていた来火はぶっきらぼうに言い放つ。


「なに?」

「何だその可愛くない返事。」

「は?」

「まあいいか。おいチビ、環には気をつけろよ。」

「何でまた?優しそうな人だったぞ。」


大鷹は大きなため息を吐く。

来火は少しイラッとして大鷹を睨む。


「なんかあるなら言えよ。」

「環って石守つってただろ?」

「うん。それがどうか?」

「あいつは元々石守じゃねえんだ。」

「???」



役名は基本的に十五歳で成人となった時に役所に提出し確定する。それ以前は一般的に親の役名を名乗る。


しかし大鷹の話では、何かしらの処罰などで役名が変わることがあると言う。

いわゆる降格だ。


(石守は降格先なのか?)


そう考えてるのがわかったのか大鷹は言う。


「石守ってのは基本的に祈守の適性がないやつの就職先だ。だからあまり地位は高くない。」

「へえ。てか何で考えてることがわかったんだ?」

「目が金色だったからな。」


来火は不思議に思った。先生には言われたことがなかったからだ。


(何で先生は何も言わなかったんだ?)


そんなこと今考えても仕方がないと思い、大鷹に質問する。


「処罰って言ったけど、環先輩は何してんだ?」

「あいつはな、禁忌を犯したんだ。」

「禁忌?」


大鷹は、環先輩とイザベラ先輩が消えていった方向を向いた。


「あいつは人型の結晶を管理してしまった。」

「それって管理できないって...」

「何でできたかはわからない。でもあいつは管理できちまったんだ。」



来火は環先輩の笑顔を思い出す。






優しそうに見えたあの笑顔が一気に恐ろしく感じた。

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