表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

お洋服!


「おはようございます、父上」


「おはよう、ミハエル」


「ミハエル坊ちゃん、おはようございます

朝食は柔らかいパンとコーンポタージュ、サラダにベーコンそれとキッシュになります」

「キッシュ?」


テーブルの前に出来立ての料理が並ぶと牛乳が高い位置から注がれる

まず牛乳を飲めと促され、一気に飲み干すとまた勢い良く注がれた


「ざっくりいうと卵を野菜とまぜて固めたものだな…パンはコーンポタージュに付けて食べると美味しいぞ」

「いただきます」


「固形物はまだ早いって言ったんだけど、やはり栄誉失調が深刻らしい。だからよく噛んで食べなさい」


塔暮らしではいつも固いパンの上、出されたスープはただ野菜をゆでたものだったので

出された物はおいしく感じた。塔から出られて良かったと思う瞬間だった


「おいひいです、父上」


「食べながらしゃべるな。美味しいならば良い。

この後は服を買いに行ったら移動する。お昼はサンドウィッチを頼んでおいたけど

着替えや採寸で動くだろうから、たくさん食べておきなさい」


「はい!」


キラキラと目を輝かせ、がっつく姿は年相応ともいえる


「ご飯は逃げないからゆっくり食べなさい。男たるもの優雅に」

「はい父上、すみません」


頬についたパンのカスを布で拭ってやると

嬉し恥ずかしそうに微笑んだ



今後も地獄が待ち受けているとも知らずに




ラリッサ服飾店 ティーラ支店


案内された処は街の中で一番大きい店ではないかと思う

お店前には紳士淑女の正装が数着飾られていた


「いらっしゃいませ~」


店の中はいたってシンプル。何着か飾ってある服を眺めると

オーギュストは中央のソファに座りカタログを開く


「子供服はあるかね?」

「お子様向けのお洋服は今置いてなくてですね、

カタログを見て大人サイズを変更してご注文を承る形になっております。

納期は量にもよりますが2週間ほどかかってしまいますがよろしいでしょうか?」


「…問題ない」


「流行りですとコチラと~」


中央から近いお店になればなるほど大人向けの服しかないらしい

社交の季節前なので店内に居た複数の淑女がチラチラとこちらを見て何やら話をしていた


やがて一人の女性がこちらに気づくとオーギュストの前に立つ


「ヴェイロン様、お久しぶりです」

「これはこれは、オースティン嬢、久しいな」

お互い軽く挨拶をすると女性は口元を扇で隠す


「こんなところに奥様ではなく子供を連れるなんて、珍しい事もありますのね」


「アハハハ!隠し子かと思ったか?領主会議で通達があると思うが先に紹介しよう

遠い親戚の子で親が流行り病で亡くなったからウチで面倒を見ることになった子だ

ミハエル、ご挨拶なさい」


「ミハエル・ヴェイロンと申します。僭越ながらレディのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「ミリア・ラル・オースティンよ」


「オースティン公爵閣下の娘で一応、第2皇子殿下と婚約していてそのうち輿入れする」

「あら、わたくしは公爵家の後継者候補の一人ですわ、結婚なんて御免だわ」


軽く会話をすると、令嬢は使用人に声をかけられ別れの挨拶をし退店していった


「とまぁ、今の令嬢とは思えない変な人だ」

「はぁ…」


結婚か…


自分には縁のない話だろうなぁ、なんて思いながら採寸を終え

馬車へと移動した


「坊ちゃん、喉渇いてませんか?もうすぐ広い草原へ出ますのでその時にティータイムにしましょう」


「ありがとう、頼むね」

「はい、喜んで」


昨日いなかった使用人が主の許可を得て同じ室内にいる

気の利く人で、気が付けばお兄さんみたいな存在になっていた


「そうだ…兄上はどんな人ですか?」


「そうだな…破天荒?」

「破天荒なラウラ様とオーギュスト様の剛胆さを合わせた性格…ですかね」


それはなんかまずいような…一抹の不安がよぎる


「ラウラはワシの妻だ」

「あの、ラウラ様はその…ご存命ですか?」

「生きてる生きてる!今回王城に呼ばれたのはワシだけだったから

ラウラは領地で今か今かと待っているぞ」


ニカッと笑うオーギュストに対し安堵するミハエルだった


(早く着かないかな)


馬車を止め、一息つく紅茶の味は少し苦く感じた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ