皇帝と接見
「よく来た、公爵よ」
「ヴィクトワール帝国の太陽、皇帝陛下にご挨拶申し上げます。14号をお連れ致しました」
「14番目の名もなき我が子よ、顔をあげよ」
公爵から軽く教えてもらった作法をこなし、さげていた頭を上げ、皇帝と顔を合わせる
その場にいた大臣含め、全員が驚き、ざわつく
「マリヴェル様の生き写しのよう…」
「でも女の子のはず…」
その美しさに誰もが息をのむ。姿勢は正しく皇帝だけを見つめる
「この皇帝に申す事はあるか」
「ありません」
「我が子よ、名は何が良いか」
「特に希望もありません」
「ならば今日からミハエル…ミハエル・ヴェイロンだ」
「ありがとうございます、父上」
お辞儀すると、見知らぬ男が肩に手を置いてきた。
白髪のオールバックで紫色をした瞳、少し皺が多い老人がそこにはいた
「陛下とお呼びしなさい。これから私が後見人、そして父となるオーギュスト・ヴェイロン前侯爵だ。息子に爵位を継がせて間もない老いぼれが、孫に位置する君を息子として養子に迎えよと皇命が出た為馳せ参じた」
「そう嫌な顔をするでない。適任者が君以外に居ないのだよ…二度目の子育てと思って迎えてくれ」
今にも泣きそうな顔をミハエルが不思議そうに見つめると同時に
オーギュストと名乗った父の手が肩に食い込み、痛みが走る
あまりの痛さに後ろへよろけそうになり、ハッと我に返った父が自分を抱き上げた
どうしてそのような顔をしたのか、理解できないミハエルだった
「申し訳ございません、陛下。このまま失礼いたします」
「気にせずとも良い。私の代わりになる者だ。その者のいう事をよく聞くように」
「仰せのままに」
抱きかかえられたまま接見の間を後にした
馬車に乗るとコンコンと後ろをたたき従者にどこか行くよう指示を出し
ゆっくりと動き出した
「ざっくりと説明すると王城を首都に置き中央、西と北にそれぞれの公爵領、私の領地は南にある。東には伯爵領がある。またそれぞれ市を分け家臣たちが管理している。伯爵領は特に細かくなっており少々管理が面倒くさそうだったな。毎年の建国際3か月前には中央に移り、それぞれの準備と挨拶をする。その為、中央に集まった各領地の貴婦人たちは社交に勤しむ。あと各領地は当主が居なくなるから子供を代理に立て領地を任せ、後継者として学ばせる」
「そうなんですね」
「うちの生業はまた今度説明しよう。まず私の娘であり、ミハエルの母でもあるマリヴェルの墓へご挨拶へ向かおうじゃないか」
「母上は…どんな人でしたか?」
「君のことを一度も忘れたことがない、春のような温かい娘だったよ」
「そう、ですか…」
父の心情を表すかのように、晴れていた空が徐々に曇り始めた