初めての外
「おじさん…は、誰」
「おじさんじゃない、私はまだ30代だ。アリスト・エルリス。エルリス公爵と呼びなさい」
「…公爵ってなに?」
「爵位だ。うーん、所謂レベルだな。君の父親である皇帝が一番偉い。
その次に皇后、その次に皇帝の子供たち。君は私より偉い地位にいるのだが見ての通り幽閉されている身。
これから君に会う人が君の後見人となる」
「後見人…」
「君の母君にあたるマリヴェル様が1年前に病で亡くなった。そのためマリヴェル様の御実家に当たるヴェイロン侯爵家の当主様が親代わりになる」
「よく分からない」
「そのうち判るようになる。森の塔は私の管理、管轄であるから私が君を迎えに来た。
その前に臭いから風呂入れてマシな恰好させないとな」
あれよあれよと場所を移され、王城に着く。
支度をメイドに任せ公爵はどこかへ消えた
「お名前はなんていうんですか?」
オレンジ髪をまとめたメイドが14号を抱きかかえる
周りにいたメイドはごみを見るような目で彼女を見下ろす
「…14号。そう呼ばれてる」
「まぁ…14号様にはどのような服がよろしいでしょうか?」
「服…動きやすいものなら適当で」
「おズボンがよろしいでしょうかね?さぁお風呂へ入りましょう」
風呂の湯が真っ黒になる程の汚れが落ち、泡泡の体を洗い流す
身体に異常はないかチェックしメイドは微笑む
「お嬢様だったのですね~!ドレスに変えましょうか!」
「…ズボンでいい」
シャツとベスト、ズボンを用意し髪を青のリボンでサイドテールにまとめ
キレイに仕上がった。メイドから公爵家の執事へと渡り、とある部屋の前に来る
ノックをし大きな扉を開くと、紙と向き合う黒髪の男性がしわを寄せこちらを見る
「閣下、お嬢様のお支度が整いました」
「お嬢様…?」
の割には男子の恰好をした少年に見える
「お嬢様です、閣下」
「動きやすい恰好をオレンジの髪のお姉さんにお願いしました」
「そ、そうか。君がそれでいいなら…キレイな白髪はマリヴェル様ゆずりだな」
「マリヴェル様…」
「さっき言ったように、君の母君だ。見た目も心も本当に美しい人だったよ」
遠くを見つめ、悲しそうな顔の公爵を横目に自分の姿を鏡で初めて見る
ダボついた服から見える肌はこけ、不格好で似合っていなかった
「約束の時間まであと少しだ、陛下を待たせる訳にもいかない。私と一緒にきたまえ」
差し出された手を握り王城内に持つ公爵家の部屋から出た
使用人はこちらを見てヒソヒソと何かを話す
(…もう帰りたい)
〈頑張って~14号〉
少年の足元に潜む影がひっそりと笑う