生きる意味
「14号 食事だ」
あれから3年が経ち、雪が溶け春の季節になった
鍵が開き、スープとパンが置かれる。この国は軍事国家ではあった物の
食事文化が発達しておらず決しておいしい物ではない。王城には騎士、城下には兵士がおり
それぞれの役目をこなしている
兵士に話しかけられ、今までずっと寝ていた白髪のそれは起き上がる
痩せこけ、骨と皮しかなく、生を感じないうつろな瞳が兵士に目を向ける
ただ出された物を食べ寝るだけで喋ることはなかった
14番目に生まれたから14号と名付けられていた
「お前、ここから出たいか?」
「…」
哀れみを込められた瞳が見つめるも何を話しているのか判らず
ただ美味しさの欠片もない物を齧る
そして14号の影からノッソリと奇妙な者が現れる
『今君にね、お外に出たいと思わないの?て聞いたんだよ』
顔も形もないウネウネと動く自分の影が後ろから伸びる
(君は誰?)
『僕は君!会話できるじゃん!しゃべらなかっただけ!?
君が呼んでくれないから僕から来たよ!』
(……しゃべる必要がなかっただけ)
『言葉が判るなら勉強は要らないよね!?魔法の事を教えてあげるよ!』
(…必要ない)
『ここから出たくないの?』
(どうして君は私が出たいと思うの?)
『だってずっと空を眺めてるでしょう。僕は君だから君のことなら何でもお見通しさ』
そう、だったっけ…そうだったね
その日から1年、この国の事、読み書き、自身の生い立ち、魔法陣の描き方、影の呼び方、
呼ぶのに対して支払う対価、体力の付け方など
少女は黒い影から教わった
彼女が5歳を迎えようとした12月上旬
皇帝は彼女を呼び出す事にした。
迎えに来た兵士は騎士と同行してきた
「おい、起きろ14号!!皇帝陛下がお呼びだ!」
「…?」
「逃走の恐れがないなら足枷を外してやれ。首輪だけは外すな」
黒髪で赤い瞳をした騎士と思われる人物は兵士に鍵を投げ渡す
腕を引っ張られ、足枷がガチャンと落ちる。軽くなった足首に違和感を覚えるのか
足首を何度も上下させた
首輪も外してくれと引っ張るジェスチャーを試みるもダメだと首を横に振られる
騎士が14号の手を取り、塔から出た