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家業


「我が家の新しい家族に乾杯!」


「かんぱーい!」


本館の晩餐へ招待され、席に座ると当主であるイリーゼがワインを掲げる

今日から母になる人はすでに出来上がっており、頬が赤い


「何かあったら私か父上に相談するといい」


「はい、兄上…ありがとうございます」


「ミハエルは今何歳なのかしら?」


「私は今年で5歳になります」


「こんな大人っぽい5歳を家族に迎え入れるなんて…しかも女の子」


急にラウラの顔が暗くなり、嫌みでも言われるのかと思ったら

ニコッと笑った


「最高にうれしいわ~~~~!」


「は、母上…!?」


抱き寄せて頬をすりすりしてくるラウラに対し

困惑を隠せないミハエルであった


「ラウラ、この子は皇帝の命で男として育てるのだ」


「なんでぇドレスいーーぱい用意させたのに!」


もう手回し済みであったか、ラウラの腕の中にいるミハエルは少し照れる


「使えそうだと判断したからであろう」


「…私はイリーゼのお嫁さんにでもよかったのよ。こんなに可愛いのに」


「兄上にはもう婚約者がいらっしゃると聞いておりますが」


「母上、お酒はもう程ほどにされた方がいいでしょう。

弟であろうが妹であろうが我が家の家族に違いありません」


イリーゼに目線を送ると淡々と語る。ステーキを口に運びワインを口にすると

呆れたのかため息を一つこぼした


「伯爵家の御令嬢が婚約者ではあるが、こやつは興味ないみたいだからの」


オーギュストはガハハハッと笑うとワインを一気飲みする


「向こうも愛はないでしょう、我が家の軍事力がほしいだけです」

「伯爵領も領地戦があるからの。血気盛んなのはうちにとっても良い事だ」


「管理が怠っているのに領地戦などくだらない」


「さて、ミハエル」


空になったワイングラスを強めに置くとその場が凍り付くように静かになった


酔っていたラウラもオーギュストが放つ殺気に

ヤダヤダと顔をしかめ扇子で顔を隠す


「本来ならば食事の席で料理が不味くなる様な話はしたくない」


「はい、父上」

「だが、使用人もいないこの空間ではこの話をするのにここがベストなのだ」


パチンと指を鳴らす。ガチャンとドアの鍵が掛けられ

外からは入れない状態になった。空間は青く染まり時計の時間が止まっていた


「使用人もごく一部しかしらない。我が家は表向きは武器に特化した貿易商を生業にしている

ラウラは趣味で東洋の反物の商売を輸入、ドレスにして販売しているがな」


「私が表向きの当主になった」


「表向き…?」


「ワシがこの場、この席に座れているのはまだ裏の仕事をしているからだ。

残念ながらイリーゼは頭がいいだけで体力がないポンコツのだ。なのでお前には裏側の当主となってほしい」


「父上…」


イリーゼはこめかみに指を添え、困った様子で父親を見る

ミハエルは少し恐怖を感じた


「我が家は暗殺を生業として生きている、皇帝の命で戦争も行う」


「そ、そんな…私には到底…出来っこありません」


「いいや、出来て当然にならなければならない。これは皇命である

明日から訓練を行うから、後で訓練場を案内する。食事が終わったら別館の地下に来なさい」


ラウラは苦しそうなミハエルに同情した

彼女は政略結婚ではあったがオーギュストを心から愛しており

結婚後にその話を聞いた時、絶望した。彼を詐欺師と罵ったこともある


輿入れ前に聞いていたらまた違ったのに、と


「覚悟がなくても作るしかない」


「……私にはできません」


「そうよ、あなた…この子はまだ5歳になる小さな子なのよ」


「お前はこの子の力を見ていないからそう言えるのだ

この子には闇の神であるエレボスが憑いておる」


「!?」


「権能を授かって生まれてきたのですか!?」


「そうだ、しかも魔力が底なし故、未契約のまま行使している」


誰もが知る「権能」

この帝国には神話が存在し王族だけが神から許された力を行使できる

ミハエルも王族の端くれではあったが側妃である母親は王族から程遠い位置にいた


「食べ終わったら別館に来なさい」


「…はい父上」


指をまた鳴らすと空間は消え、時計は動き出す

鈴を鳴らすと使用人が入ってきて、オーギュストは席を立ち

食堂からいなくなった


「本当なのか、ミハエル」

「兄上…私はそんなたいそうな人間ではないのです。気持ち悪いですよね、私の事」

「いいや、そんなことはない。これからお前はヴェイロンの人間として生きていく

そんな自分を卑下するようなことを言うのはやめなさい。我が家がなめられてはならない」


「…はい。気を付けます」


デザートが出され、アイスを口にするも味が判らず席を立った

クロは影からミハエルを心配そうに見ていたが、何を言えばいいか判らず

揺らいだ影の中で静かに泳いだ

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