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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

誰でも出来る妖怪退治

作者: アァノルド

その村に最近、カマイタチという妖怪が住み着いた。


動きは風のように早くて人の目では捉えられず、

すれ違うときに両手の鎌で人を切りつけていく、

恐ろしい妖怪だ。


すでに何人かが被害に遭い、還らぬ者となってしまった。


困り果てた村人たちは村長に相談し、

村長は妖怪退治を生業にしている、遠くの坊さんに相談した。


坊さんが言うには、

「カマイタチが人を切り、殺める理由は何もない。

人が食べるために他の動物を殺めるような理由は持っていない。

ただ、そういうふうに生まれ出来ているから、人を切っている。

だから、やめられないサガではあるが、

やめようと思えば理由は無い。」

との、曖昧な教えだが見込みはあるようだった。


そして、坊さんがカマイタチを説得してみようと言うので、

村のスナック「化け物クラブ」に酒席を用意した。


初めは坊さんもカマイタチもあーだこーだ議論していたが、

二人とも酒が好きらしく、酒が入るともう止まらなかった。

ベロベロに酔った二人はそのまま寝てしまい。

村の人たちが抱えて送っていった。


だが、カマイタチが起きると鎌が無くなっていた。

昨日、しこたま飲んだ記憶はある。

そして、帰りは村の人たちに送ってもらった、

だが、鎌をどうしたのか、全く覚えてない。


村のやつらが取ったのか?でも、鎌を取られても替えは村にいくらでもある。


探して無かったら村のやつらに聞けば良い。

と直ぐに昨日の帰り道を探していると、村の若い女に出くわした。

女はカマイタチの話を聞くと、自分も一緒にと探してくれた。

見た目は普通だが、活発で愛らしく、人に優しくされて嬉しかった。


次に村の男が、そして子供が、といったように遂には村の全員で、

人を殺めるカマイタチの鎌探しをした。


そして、昨日行ったスナックのトイレに鎌が置いてあったのを、

ホステスが見つけた。

そうだ、トイレのときに棚に置いたんだ!思いだした!

「ありがとう!ありがとう!」

とカマイタチは村のみんなにお礼を言った。


その日から、カマイタチは人を切れなくなった。


当然だ、村のみんなを知っている。

一人ひとりにありがとうを言ったんだから。

切ろうとしても、みんなが優しくしてくれた時の気持ちがチラつく。

人を切れなくなったカマイタチは、村の人たちが気がついたら、

切れていた程度の切り方になった。


村のみんなは坊さんに感謝し、村長を称えた。


それから何日かたった夜、遠くの坊さんの家でカマイタチが飲んでいた。

「上手くいったもんだね。報酬と名声を同時に手に入れるなんて、

 坊さんの世界では全くのダメ坊主なのに」

「まあね。坊主の才能はないけど、俺は君たちと意志疎通が出来るから、

 本当に助かっているよ」


元々、カマイタチと坊主はグルだった。


遠くの村にカマイタチが行って騒ぎをお越し、次に坊主が行って解決する。

という、このビジネスモデルを完成させ、実践していた。

カマイタチは思う存分切る、坊主は名声を得る。

そして、二人ともが儲かる、言うこと無しだ。


だが、今まで行った村の村長はこのことを知っている。

否、切られた者は切られるべく仕向けられていた。

養いきれない老人や子供が標的となるように計画されていた。


このカマイタチ計画は、食糧難解決のための調整弁として、

周辺の村に利用されていた。


解決のための資金は村人から徴収し、その半分は村のために貯蓄する。

解決された後は、気持ち良く村の仕事に取りかかれるため能率が上がる。

そして、村長の支持率アップとなり、村の団結力も上がる。

その他にも、使い方によっては村としてはメリットしかない。


そして今日あたり、あのカマイタチと坊主が一緒にいる所を、

警察が発見するように仕組んでおいたから、

もう二人と今後会うこともないだろう。


このカマイタチ計画はだれの目にも触れることはなく、

これ以上、誰も悲しむことはない。


「これは正義でも正しいことでもないが、必要なことなんだ」


と、一緒に散歩している可愛い孫の手を握った手に力が入った。

「どうしたの?」と見つめる孫を守るためにも、

村長は汚れ役でも何でもやってやると村に誓った。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 村長の策士ぶりにゾクリとしました。
[良い点] 日本昔話的な円満解決かと思ったら、裏では色々と画策しているところ [気になる点] 大人って汚い… [一言] 怪異は人間に迎合してはいけないと良くわかりました
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