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うちのクラスのお姫様

キーンコーンカーンコーンーーーーー


校舎に始業の鐘の音が響き渡る。

無意識に教室のドアを見つめてしまう。

わたしだけじゃない。

クラス中が注目している。

この、鐘がなり終わるか終わらないか、

その微妙な瞬間にいつも「彼女」はーーー


ズシャアアアア、という音が聞こえた(様な気がする)。

それと同時に、美少女が教室にスライディングしてきた。


「ふう。間に合った」


少しほっとしたような、気の抜けたニュアンスがありつつも清涼感漂う美声で彼女がつぶやく。

そんな彼女を恍惚とした目で見ているのは、1人や2人ではない。

なんならわたしもちょっと見惚れている。

この光景が、このクラスでは日常茶飯事なのだ。


森野美姫(もりのみき)。今のは間に合った、っていうのか?いつも言ってるが、5分前行動を心がけなさい。大体、毎回そんなギリギリのスライディングで登校してきて、危ないだろ。お前の体が。いつか怪我するんじゃないかと先生は心配だ」


我がクラスの担任、剣持真実(けんもちまこと)先生が、いつものように小言を言う。これにも慣れたものだ。剣持先生は生徒思いで、年齢も若くて中々イケメン、生徒に人気がある。あと、怒る時も嫌味っぽくないのがいい。


「剣持先生、鐘がまだ鳴り終わっていなかったので今のはセーフだと思います。いつも申し訳ないとは思っているんですけど...どうしても朝弱くて。・・・・・。」


ん?今、朝弱くて...の後何か言ってた様な気がするけど、聞き取れなかったな...。

とにかく、今日も朝から平和だ。姫の華麗なスライディングも見れたし。

あ、「姫」というのはスライディングしてきた彼女のニックネーム、というかクラスメイトが影で読んでいる名前だ。本人の前では呼んだことがない。あまりにもぴったりくるあだ名すぎて、うちのクラスだけじゃなく他のクラスにまで広まっている。なんといっても姫は美少女だ。本当に綺麗。日焼けしていない白い肌、日本人離れした高い鼻、リップなんて不要と主張する様なピンクに色づいた唇。目なんてぱっちり二重でちょっと色素が薄くて薄茶色の虹彩。まつ毛も長くて瞬きするたびに小さな風が起こりそう。髪はちゃんと校則を守って黒髪ロングなのだが、いつも毛先をふんわり巻いていて可愛い。本当に、ため息つきたくなる美女なのだ。しかも名前(本名の方)に「姫」って漢字が入ってるし。まさに「姫」!

まあ、そんな姫は見た目は完璧すぎるくらいなのだが、結構変わっている。

毎日スライディング登校(たまに普通に遅刻)してくるのも普通じゃないが、それ以外でも見た目に反して結構やんちゃなのだ。そんなところも可愛いなあなんて、最近わたしの趣味は姫ウォッチングだったりする。

勘違いしないでほしい。

決してストーカー行為などは働いていない。

ただ、姫の日常をささやかに見守っているだけである。


そしてなんと!男女でニ席ずつ隣り合う席配置の中、姫の席は私の前なのだ!これで見ない方がおかしい。


「おはよう、森野さん」

わたしは毎日の挨拶も欠かさない。

姫の容姿にびびって声かけるのも憚られる、という気持ちもわかるが、それよりせっかくクラスメイトで近くの席になったのだ。ちょっとでもお近づきになれたら嬉しい。


「おはよう、盾石さん〜」


くぅ、可愛い。ちょっと眠気の混じったふわふわした雰囲気もいい。姫は女王様!という気取った感じは一切なく、平民(?)にもフランクに接してくれる。自分から積極的に話しかけたりはしないタイプなので近寄りがたい、とか一匹狼的に見られがちだが、話しかけたら嬉しそうに答えてくれる。はにかんだ感じの笑顔も可愛い。

申し遅れたが、盾石というのは私のことだ。

盾石美徳(たていしみのり)。恐れ多くも姫と同じ「美」という漢字が入っている。本当に恐れ多い...しかも「美徳」と書いて「みのり」と読むので、男の子に間違われることも多い。全く両親め。名前負けしたらどうするんだ。

わたしはそんなに自己肯定感低い方ではなく普通なので、卑屈になることなく今日まで生き延びている。友達もそこそこいるし、趣味もあるし、結構素敵な学校生活を送れているのではないだろうか。

スリーピング・ビューティー(眠り姫)から着想のみを得た、全然違う話。


サクッと読める、お茶の間の御伽話を目指しています。

気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

ほんの少しでも皆様に楽しい時間をお届けできますように。

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