ギャルキャンパー 白木 桃 編
ところが話すネタがつきなかった。
お互い趣味のキャンプネタで大盛り上がりだ。
白木 桃は素人キャンパーではなく、かなり本格的だった。俺もかなりキャンプには入れ込んでいたから話が弾む弾む。
まさかこんなギャルが俺よりも本格的なキャンパーだったとは。自ずと興味がわいてきてしまう。
(うーん、人は見かけによらないな。学校ではギャルで陽気なクラスの人気者って感じなのにここでキャンプの話をしてると落ち着いた見識の深い才女にさえ見えてくる)
「こんなにも男の子とおしゃべりが楽しいと思ったの初めてかも。わたし普段はギャルっぽい見た目だけど実は男の子って苦手なんだよね」
(ちょっと話しただけだけど妙に納得できる。白木 桃さんは見た目と違って貞操観念が強そうだ)
2人は盛り上がってしまい、警察が来た後もキャンプの話に花を咲かせた。
そして気づいたら夜を迎えていた。
2人でお互いの最高のキャンプ飯を作り、分け合って食べた。
「おいしい!桃ちゃんの作ったどんぶり」
「そうでしょ、蒼乃くん、これ気に入った?
わたしこれ大好きでいつも作るの」
「作り方教えてよ。今度、俺も作ってみるよ」
「簡単だよ。魔法の調味料が2つあればできるの。わたしはいつも小分けにしたびんに入れて持ち歩いてるの」
「なになに?教えてよ」
「ふふっ、えっとね、めんつゆと堀超って言うふりかけ」
「めんつゆに堀超か!いいチョイスだね。たしかに堀超はお肉にも合うしね。俺も親子丼作る時はめんつゆで出汁とるよ」
「わかる!やっぱ気が合うね」
キャンプ飯でも話が盛り上がった。
……………………
………………
…………
「ねえ、蒼乃くん、今度また一緒にキャンプしない?」
(かわいい......)
桃ちゃんの照れながら言うその仕草と表情が俺の心を鷲掴みする。
「もちろんいいよ、《《白木》》さんがこんなにもキャンパーだって知らなかったよ」
「え?わたし、前に会ったことあったっけ?」
(やばっ、口を滑らした)
「俺よりもすごいキャンパーがこの辺にいるとは思わなかったって意味だよ」
「そうだよね、会ったことないよね。私も蒼乃くんて近くで見たことあるような気がしてたんだけど勘違いだよね」
「そうそう、《《ぜっーたいに近くにはいないよ》》。他人の空似じゃないかな」
ポツポツ、ポツポツ、ザッ、ザッ、ザーー
雨が急に降り始めてきた。
2人でテントの中に避難する。
1人用のテントだと2人入るにはきつい。
密着せざるを得ない。
三角座りする2人の肩はすでに触れ合っている。
「ごめんね、狭くて。私は触れても気にしないからね」
「うん、俺も肩が触れてるけどごめんね」
………………
「明日から学校だからそろそろ帰りたいんだけどね」
白木 桃さんが恥ずかしそうにごまかした。
「同感。雨止んでほしいね」
………………
「クシュン」
白木 桃さんが可愛らしいくしゃみをした。
「寒い?」
「うん、ちょっとだけ」
「薄着だもんね。羽織るものはある?」
「今日は夕方までには帰ろうって思ってたから持ってきてないの」
「わかった、ちょっと待ってて」
俺は雨の中、自分のテントに行ってカバンの中からジャージを取り出した。
「ほらっ、これ着てな。返すのは今度のキャンプの時でいいから」
「ありがとう。うれしい.......」
(やばい、こんなことされたら好きになっちゃう......)
「ちょうど雨も上がってきたし、かえろっか、桃ちゃん」
「うん、帰ろ、蒼乃くん」
俺たちは別々に帰途についた。
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あとがき
佐伯くんが珍しく興味を示した女性が白木 桃さん。今後はどうなるのでしょうか。