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闇小説鍋  作者: 熱湯ピエロ
次元超越世紀末激闘編
6/19

ツンディレ

読み方はゲニィとベティでいいと思います

『ツンディレ』


「なぁ、ゲルディブボペッポの兄者」


 なんだ、弟のベルデガルディよ。何故テレパシーを使わん。わざわざ口を使って話すなどエネルギーの無駄だぞ。


「兄者よ。実は『ニッポン』のカルチャーデータベースを調べている時に、興味深いものを見つけてな。是非兄者とこれについて語り合いたいのだ」


 またお前の趣味か。そういう時、お前は口を使いたがるものな。


「わかってるじゃないか。ワービサビーって奴だ。いいだろう?」


 しょうがない。


「弟よ、これでよいか」

「あぁ。ありがとう兄者。だが、これだとどっちが話しているか分かりにくいな」

「ふむ、高位生命体たる我等は『第4の壁』をはっきりと認識しており、この会話が文字として見られていることも理解している。それならば、多少の配慮もやぶさかではないか。あれを使うとしよう」

「流石兄者」


ゲ兄「よし、どうだ」


ベ弟「おぉ。わかりやすい。キュルゾディメンゲイナー装置をここまで容易に使いこなすことが出来るのはこの次元では兄者ぐらいだ」


ゲ兄「ふふ。まぁ、キュルゾディメンゲイナー装置のことはどうでもよかろう。お前が話したいこととは関係あるまい」


ベ弟「そうだった。それで今回語り合いたいことというのはな、『ツンディレ』という概念だ」


ゲ兄「ツンディレ?」


ベ弟「ニッポンの、主に創作物のヒロイン設定として広まったカルチャーなんだが、中々に興味深くてな」


ゲ兄「聞かせてもらおう」


ベ弟「心の中では相手、所謂主人公のことをすごく好意的に思っているのに、言動では貶めたり暴力を振るったりするような二面性のあるキャラを指して『ツンディレ』と言うんだ。まぁ諸説あるんだが、最終的な一般解はこれだな」


ゲ兄「なるほど、お前の好きそうな話だ。我等高位生命体は、その気になれば相手の心なぞテレパシーで分かってしまうからな。相手の心が読めない低位存在だからこその心の機微から生まれるストーリー展開……ワービサビーというわけか」


ベ弟「そうだが、実は面白いのはここからでな」


ゲ兄「ほう」


ベ弟「この『ツンディレ』という概念は生まれたと同時に爆発的に世には広まったんだが、ヒロイン設定としてはあっと言う間に廃れてしまったんだよ。定着することすらなかったみたいだ」


ゲ兄「なに? 『珍しい設定ではなくなった』というわけではなく、『急に見なくなってしまった』というわけか?」


ベ弟「そう。逆に使われたら『珍しい設定だな』と思われるくらいに廃れた」


ゲ兄「ふぅむ。悪くない設定だと思うんだがな」


ベ弟「なぁ兄者。兄者はどうしてヒロイン設定としての『ツンディレ』は廃れたんだと思う?」


ゲ兄「まぁそうだな。爆発的に広まったと言っていたことから察するに……使われすぎて『観衆』に飽きられたのではないか? それに、似たような設定が既に世に氾濫していたのなら作者として忌避したいと思うのも理解できる」


ベ弟「流石兄者。見事な模範解答だ」


ゲ兄「……どうやら違う持論があるようだな」


ベ弟「うむ。私はな、『ツンディレ』というのはヒロイン設定として『構造的な欠陥』があったのだと考えている」


ゲ兄「欠陥?」


ベ弟「創作物のヒロインには、どうしても逃れられん問題がある」


ゲ兄「何だそれは」


ベ弟「サブヒロイン問題だ」


ゲ兄「いや、待て。創作物だからってサブヒロインが必要とも限らないだろう?」


ベ弟「兄者。哀しいが、『ツンディレ』が生まれた時代の創作物には観衆の人気が必須だ。そうじゃないと作品自体を続けられなくなるからな。そして、観衆人気に大きく寄与するのが『サブヒロイン』なんだ。観衆の大半は特定キャラのファンになる。ヒロインだけよりも、ヒロインとサブヒロインで構成した方が確実に人気は出るのだ。そうである以上、サブヒロインを出さない、という選択肢はほとんど無いと言っていい」


ゲ兄「ふむ、理解したよ。全く、弟の知識の深さには脱帽だな」


ベ弟「理解してくれたところで続けよう。では『ツンディレ』をヒロインとした時にサブヒロインを出そうと思ったら……兄者ならどういうキャラにする?」


ゲ兄「まぁそうだな。主人公との関係性はひとまず置いておいて……ヒロインと人気を取り合わないよう、なるべくキャラが被らないように……月並みな意見だと思うが、真反対の性格……素直で優しいキャラにするかな」


ベ弟「そう、大体そうなる。そして『ツンディレ』は『主人公が好き』という特性上、サブヒロインはどうしても『恋敵』になりがちだ」


ゲ兄「分かってきたぞ。『ツンディレ』は自分の気持ちに正直になれない。だから創作上では基本的に『恋敵』であるサブヒロインが『素直』に主人公に寄り添おうとするところを『邪魔』する形になる。何故だと問われても『あなたが好きだから』なんて言えるはずもなく、『なんとなくよ!』みたいになる」


ベ弟「一度や二度ならまぁいいかもしれないが、それが続くと」


ゲ兄「観衆としては『素直』なサブヒロインを応援したくなるし、『邪魔者』のヒロインを疎ましく思うだろうな。人の邪魔ばかりするような奴に主人公が惹かれていくのも不自然だ」


ベ弟「うむ。あまりに酷いと『作者』すらもそう考えてしまうかも」


ゲ兄「なるほど」


ベ弟「つまり! 『ツンディレ』というのは『ヒロイン』にすると観衆からのヘイトを集めやすく、『サブヒロイン』にキャラ的に負けやすいのだ!」


ゲ兄「それが『構造的な欠陥』か」


ベ弟「うむ。『ツンディレはヒロインにするには元々難しかった』。物語が長編になればなるほど、な。それが廃れた理由だというのが私の持論となる」


ゲ兄「一理ありそうだ」


ベ弟「これを証明する方法など、どの次元にも存在しないがね。長々と付き合わせて悪かった」


ゲ兄「いや、大変面白い話だったよ」

全く、毎度興味ない話に合わせる私の身にもなってくれ。


ベ弟「兄者……『逆ツンディレ』はボディーに効くからやめてくれ」


ゲ兄「ふふ。やはり我等高位生命体での『ツンディレ』は無理があるな」


【ツンディレ 終わり】

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