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闇小説鍋  作者: 熱湯ピエロ
常時死亡確認続行未定編
19/19

変身ヒーロー

『変身ヒーロー』


「「変身!!!」」


 勇ましき掛け声と共に5人の姿が変わっていく!

 現れたるは強化スーツを身に纏った戦隊ヒーロー!!


「燃える闘魂! ゴーレッド!」

「静謐なる知略! ゴーブルー!」

「ギンギラ欲望! ゴーイエロー!」

「平和なる愛! ゴーピンク!」

「優しき自然! ゴーグリーン!」


 5人揃って!


「「ゴーゴーファイブ、ここに集結!」」


 彼等に相対した青白い肌を黒革の下着のようなボディスーツで局部だけ隠した、角の生えたセクシー女が手に持った鞭を振るい、忌々しげに唇を噛む!


「えぇい、またしても現れたか、ゴーゴーファイブ! お前達、やっておしまい!!」


 女の指示に「「キー!!」」と応え、彼女の後ろに控えていた頭部まで全身黒タイツの奇妙な連中が5人に向かって襲い掛かる!!


 説明せねばなるまい!!

 女の名は世界を恐怖によって支配せんとする悪の組織『ヴァイスブラック』の幹部、『女帝プケリッツ』!!

 ゴーゴーファイブはヴァイスブラックの野望を阻止せんとする正義のヒーローなのだ!!


「ゴーファイヤー!」

「キー!!」

「ゴー札束殴り!」

「キー!!」

「忌々しきゴーゴーファイブ! 今度こそ息の根止めてくれる!」


 行け行け僕らのゴーゴーファイブ! 悪の組織をぶっ潰せ!!!

 負けるな僕らのゴーゴーファイブ! 世界の平和を守るんだ!!!



 ある日のこと。


「なぁ丈二じょうじ、俺達が変身した後の強化スーツってどっから現れてんだ?」


 そう尋ねたのはふとし。正体はゴーイエローだ。

 『丈二』とはゴーレッドの本名である。

 丈二は首を捻り、数秒考えた後、太の肩をポンと叩きニッコリと笑った。


「わからん! そういうことは『博士』に聞くべきだ!」

「そりゃそうだな」


 2人は頷くと、秘密基地の最深部へと向かうエレベーターのボタンを押した。


 秘密基地最深部。

 そこには薄暗い部屋で幾多のモニターが怪しく輝き、奇妙な文字列を延々と垂れ流している。

 その中心で背を丸めて凄い勢いでキーボードを打ち込んでいる小さな少女。

 実は彼女こそが司令塔兼兵器開発担当のゴーゴーファイブの実質の中心人物。

 名は『森杉もりすぎ ロリコ』! 通称『博士』である!!


「博士博士! 聞きたいことが!」

「お、おい! 不躾すぎるって!」


 ノックもせずに部屋に飛び込んでいく丈二! その後ろでは太がオロオロとしている。

 ロリコはため息を小さくついた後、回転いすを反転させて二人に向き直った。

 そして、ずれた丸眼鏡をくいっと指で上げて直し、小さな口を開く。


「質問は10秒以内にしたまえよ」

「俺達の強化スーツってどっから来てんだ!!???」

「ほぉ」


 ロリコは面白そうに口元を歪めた。


「バカ共にしては中々面白い質問だ。私の造った兵器に興味があるというわけか」

「そうなのか?????」

「あ、はい、そうです」

「そういうことだそうだ!!!」

「ふむ、お前達はどう思っているんだ?」


 思わぬロリコからの逆質問。丈二は即答で「わからんから聞いている!」と元気よく答えた。対する太は少し考え、


「この基地から転送してる、とか」

「バカなりに考えたようだが不正解だ」


 ロリコはまたモニターに向き直ると、キーボードをカタカタ打ち込む。

 すると、モニター群にデフォルトされた丈二の姿が映し出された。


「バカにもわかるように結論だけ教えてやる。お前達の強化スーツはお前達が来ている服と腕に巻かせた変身バンドを素材に、『その場で生成している』のだ。こうやってな」


 ロリコがターン!とエンターキーを押すと、デフォルト丈二の服が脱げ、その服がモニョモニョ動き強化スーツになると、デフォルト丈二へと装着された。


「ふ、我ながら天、才……」


 ロリコが恍惚と呟く。


「なるほど!!!!」


 丈二はわかったように頷いたが、絶対わかってないだろう。だが、答えを聞いて満足したのか、「ありがとう!」と頭を下げて足取り軽く部屋から出て行く。

 だが、もう一人の方……太はまだ部屋に残っていた。


「あの、博士、それなら……」



「まてぃ!」

「ぬぅー、またしても邪魔を……ってキャー!!!!」


 プケリッツは鞭を落とし、取り乱した様子で顔を手で覆う!

 それもそうだ!

 何故なら、そこには局部を惜しげもなくさらしたすっぽんぽんの太が立っていたからだ! ちなみに他のメンバーはいない!!


************

「博士、もし、もしですよ。素材になる衣服がなかったら……どうなります?」

「ふむ……下着ほどあれば十分な材料ではあるから気にしてなかったが、丸裸だったらどうか、ということか。シミュレーションするなら……」

「ゴクリ」

「うむ、近場にあるものを強制的に素材にする、と出た。まぁ近場の誰かの服がちょっと破れたりするかもしれんが、世界の平和のためだ、仕方あるまい」

************


 今ここにすっぽん太以外のメンバーはいない。

 そして、一番近いのはセクシー女幹部のプケリッツ!! 更にプケリッツは下着レベルのものしか身に纏っていない!!


「俺はここで終わってもいい!!! 俺は、俺は裸が見たいんじゃぁぁ!!!!」


 すっぽん太、魂の雄叫び!

 対するプケリッツは「キャー!!! キャー!!!!」と生娘きむすめの如く騒いでいる!


「うぉぉぉぉぉぉ!!! 変! 身!!!!」


 怒号のような掛け声と共に、彼の腕に巻かれた変身バンドが輝きを放つ!


 そして!!!


 ビリっ!!!!!


「キー!!!???」


 プケリッツの後ろにいた戦闘員の一人の黒タイツが盛大に破れさり、太はゴーイエローに変身した。黒タイツを失った戦闘員の正体はただのおっさんで、「いやん」と局部を隠すとそそくさとその場を去った。


「な……んで……? 俺はプケリッツの服を……」

「何を言っているかよくわからんが……私のこれは、皮だぁぁぁ!!!!!」



 一人先走りプケリッツに挑んだゴーイエローは敗れ、そのままゴーゴーファイブは全滅し、そして、世界は恐怖によって支配されたのだった……


【変身ヒーロー 終わり】

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