漫才
新世代お笑いコンビ、『ファニーアップ』! 初登場!
『漫才』
ボケ「どうもー、先日の仮想通貨暴落で500万の借金をこさえたボケでーす」
ツッコミ「……えっ」
ボケ「二人合わせてー、みんなをードカンと笑わせたい! 『ファニーアップ』! でーす。よろしくお願いしまーす」
ツッコミ「いや、一言目でドン引きしてんだけど……え、マジ?」
ボケ「ドカンと笑わせたい!」
ツッコミ「ガッツポーズやめろ」
ボケ「ファニーアップがあっぷあっぷ(笑)」
ツッコミ「あっぷあっぷしてんのお前だけだから。なんだそのドヤ顔。おちょくってんのか」
ボケ「表面上だけでも明るくしてたくて」
ツッコミ「……ごめん」
ボケ「汚い金でもいいから欲しい」
ツッコミ「コメントに困る」
ボケ「それで散歩してた時にふと思ったんですよー」
ツッコミ「『それで』で繋がる会話どっかにあったっけ?」
ボケ「銅像ってあるじゃないですか。建物の前とか学校とかに置かれてるデッカイの」
ツッコミ「この空気で漫才やるのキツいけど、お前の現在の方がキツいもんな……いいぜ、付き合ってやるよ」
ボケ「ありがとな、親友。後で金貸してくれ」
ツッコミ「銅像、あるよね。忠犬ハチ公とか、学校の校長の奴とか。それがどうかした?」
ボケ「そうそう。そういうの。で、それ見て思ったんです。『時代に合ってない』、って」
ツッコミ「ほう」
ボケ「銅像といえど、この令和の価値観にアップグレードしていかなきゃいけないと、僕は思うわけですよ!」
ツッコミ「時代に乗ろうとして失敗した奴の言葉には簡単に頷けねぇな」
ボケ「アップグレード対象の銅像、まずはコイツです。はいドン」
ツッコミ「あー『考える人』。図書館前とかにあるよね。有名な奴じゃん。何が問題なの」
ボケ「はー……お前は本当にすっとこどっこいだな」
ツッコミ「はぁ」
ボケ「『何が問題』って、問題だらけですよ!」
ツッコミ「え、マジわかんない」
ボケ「もうパッと見で、真っ裸。これがダメ! この世の中には男性の裸が目に入るだけで不快に思う人だっているんですよ! そういう方々に配慮しなきゃ!」
ツッコミ「いやいやいや、銅像なんてそんなもんでしょ!」
ボケ「更にです。筋肉質の男がモデル、これもいけない。『考える人』というタイトルが男らしい男の銅像というのは、まるで『考えるのは男の特権!』とでも言わんばかりじゃないですか。女性が考えちゃダメなんてことあります? 違うでしょ。こういうのはジェンダーレスでなければならないんです!」
ツッコミ「それこそ考えすぎだろ!」
ボケ「全く、こんなことに気付かないなんて一体政治家は何をやってるんだ! どうせ汚い金儲けばかりしてんだろ!」
ツッコミ「よくない思想が出てきてるな」
ボケ「ということで、僕、考えてきました。誰もが不快にならない『考える人』」
ツッコミ「そんなこと出来んの?」
ボケ「はいドン!」
ツッコミ「……ピクトグラムじゃん!!」
ボケ「これが令和の『考える人』です! 裸も性差もありません!」
ツッコミ「確かに! じゃねぇよ。ロダンに謝れー!」
ボケ「さぁ続けていきましょう」
ツッコミ「続けるの……? この芸術を汚す行為」
ボケ「お次はこちらです。はいドン」
ツッコミ「『二宮金次郎の像』っすね。薪を背負いながら本を開いてる奴。これにもケチつけるんだ」
ボケ「はーダメです。ダメダメですね。何ですかコレ」
ツッコミ「二宮金次郎だよ」
ボケ「まず、この本。今時は本を物理書籍で読んでる奴なんていません。ここはスマホを持たせましょう」
ツッコミ「一気に感じ悪くなったわ。皆さん、歩きスマホは危険なので絶対に止めてくださいね」
ボケ「更に薪拾いでは令和の時代では生計が成り立ちません。ベーシックインカムが導入されれば話は別ですが、現状ありませんので。全く、政治家は何をやっている! 汚い金儲けばかりに精を出す唾棄すべき汚物共!」
ツッコミ「またよくない思想漏れてるよ。気を付けて」
ボケ「また、コンクリートジャングルと化し生活圏が広がった日本を生き抜くなら、徒歩では移動手段として心許ないです」
ツッコミ「二宮金次郎跡形も無くなりそうな予感がする」
ボケ「よって背負っているものと移動手段を変えた金次郎が、こちら!」
ツッコミ「……ウーバーイーツだぁ! 完全にウーバーイーツのバイト中に依頼待ちしてる人だよ! 自転車に跨りながらスマホ開いて「依頼こないかなー」って!」
ボケ「バイトに精を出すあまりに、勉学を忘れた令和の金次郎です」
ツッコミ「それじゃ学校に置けんよ! バイトの像って意味わからんもん!」
ボケ「生きるというのは大変です」
ツッコミ「大変なことになってる奴がいうと重いな……」
ボケ「はー……汚い金でもいいから欲しい」
ツッコミ「コメントに困るっつってんだろ、いい加減にしろ」
ボケ&ツッコミ「「どうも、ありがとうございましたー」」
【漫才 終わり】