6話 映画館
映画館の劇場内に入っていく。お客さんの数も少ない。平日の昼間ってのもあるしコロナウィルスの事もあるし仕方がない。映画のCMが延々と流れるなか、やや薄暗い館内でアルファベットと数字の組み合わせで指定された座席を探す俺達。座席に着くとホッと一息つく。そして薄暗いなかでスクリーンの光で仄かに照らされた、凛の横顔を見る。きれいだ。わが妹ながら美少女だと思う。
しばらくすると映画の本編が始まった。内容は【剣で戦うやつ】でなかなかアクションシーンが良かった。しかしどんどん眠くなってくる…。駄目だ。隣に女の子がいるのに寝てしまうなんて俺は必死で手の甲をつねって起きていた。凛はぐっすり眠ってしまっていた。
気が付いたら【エンドロール】が流れて、凛をそっと起こしてやる。凛は「ううっ…」と目をこする。俺は最後まで見たけど面白い映画だったと思う。そのまま光が差す出口へと歩いていく。凛がゆっくり眠れただけでも来て正解だった。
「全然見てない。黒船が襲来してからどうなった?」
オープニングのところだった。多分本編とは関係ないので何とも言えなかった。その質問に答える代わりに俺は謝罪した。
「凛、帰依ちゃんの事は許してくれ。もう別れてしまったとはいえ…あまりにも不誠実だったと思う」
「いいって。私は兄さんの事、そんなに好きじゃないしそもそも兄妹だし」
ええ・・・?そうなの?
「俺は嫌だぁ。凛と普通の兄妹に戻りたくない」
思わず抱きしめてしまった。