4話 ぬいぐるみマスターの能力③
「それで、ステータスを知りに僕は来たんですが、何故お茶を飲んでいるんですか?」
神様の招待を無下に出来ず紅茶を飲んでいる訳なんだが、お茶会を始めてからすでに10分。一回もステータスの話が出てこない。
「さあ、何でだろうね~?」
「貴方がお茶に誘うからでしょうが!」
「まあまあ、落ち着きなって。時間はたっぷりあるんだ。ゆっくりしていこうじゃないか」
神様は僕を宥めつつ紅茶を飲む。
「……はあ。分かりました。紅茶は飲んでいきます。でも、それはそれとして、ステータスをそろそろ知りたいんですが」
「うーん。残念だがそれは出来ない」
一瞬も悪びれる事なく神様は言う。
「へっ?それってどういう事ですか?」
「それはこっちが聞きたいよ。何故昨日クラスを授かったばかりの君のステータスは上がり続けているのか。そのせいで僕はステータスカードを作れなくて困ってるんだ」
……へ?僕のステータスが上がり続けてる?それって、どうゆう……
「もしかして、君。昨日クラスを発動させたのかい?」
あっ!
エキルはしまった、という顔をする。
「その顔は、やはり発動させたんだね」
「はい……」
僕は申し訳なく思い頭を下げる。
「別に悪い事ではないから頭を上げてくれ」
「でも……」
神様がステータスカードを作れていないのは僕のせいだ。僕のせいで神様に余計な時間を取らせてしまっている。そう考えると申し訳なくて頭を上げられない。
「君は素直だね。大丈夫だよ。これくらいのトラブルなら今までも何度かあった。すぐに対処できるさ」
僕はその言葉を聞き、少しほっとする。
「ただ、問題はステータスが上がり続けている事だ。君がクラスを発動させたのは昨日。今はここにいるから使えないはず。それなのに何故君のステータスは上がっている?」
「それは僕にも……」
昨日貰ったばかりで僕もよく分からないのにそんな事聞かれてもなあ。
「……まあいいや。取り敢えずその件は保留にするとして。出来たよ。君のステータス」
「えっ!?」
早!トラブルもすぐに解決する。やっぱりこの人神様なんだなと僕は思い返した。
「ありがとうございます」
「いや、謝るのはむしろこっちさ。遅れてしまってすまない。お詫びにステータスにちょっと細工をしたから後で確認してね」
神様は僕に謝ると更にはお詫びまでしてきた。
「あ、ありがとうございます。でもお詫びなんていらないのに」
「そういうのは貰っておいた方が良いんだよ。君は僕のお気に入りだからね。勝手に死なれちゃこっちが困る」
「そういう事なら…貰っておきます」
「うん。じゃあ、そろそろ時間だね。ステータスカードは祭壇に置いてあるから忘れずにね」
「はい」
「じゃあまたね。エキル君。次会えるのを楽しみにしてるよ」
神様がそう言い残し姿を消した数秒後、僕は意識を失った。
☆☆☆
目を覚ますと僕は祭壇にいた。そして、僕の隣には一枚のカードが置いてあった。
「これがステータスカード……」
親の元へ戻ろうという気持ちより、早くステータスを見たいという好奇心が勝ったエキルはステータスカードを端から見ていく。
名前 エキル・キルガザール
年齢 7歳
クラス 【ぬいぐるみマスター】(レベル1)(自身の認めたぬいぐるみを使役する。使役している者は使役しているぬいぐるみの能力の1%を自身の能力に追加する)
スキル 剣術(レベル1) 創造神の加護(レベル10)(ステータスに大幅な補正がかかる)
魔術 創造魔法(レベル1)
生命力 F(SS)
物攻 F(SSS)
物防 F(SS)
敏捷 E(SSS)
精神 D(SS)
魔攻 G(SSS)
魔防 G(S)
魔力 SSS(SSS)
……うおおおいぃぃいい!!なにこれ!?何がちょっとだよ!滅茶苦茶細工してんじゃん!何創造神の加護って!?しかもレベル10じゃん!創造魔法って何それすごっ!神様ありがとうございますでもこれはやりすぎ!!
「はあ…はあ…。と、とりあえず落ち着こう」
僕は取り乱した呼吸と頭の中を深呼吸で落ち着かせる。
「……まず、このクラスは大丈夫だ。少し分からないとこはあるけどそれは帰ってから考えよう。次にスキルと魔術。…うん、無視だ無視。最後にステータスだけど………はあああぁぁ」
僕は視線をステータスの下の方へ向けた後、深いため息を吐く。
「精神は多分最初の神様のドッキリのせいだと思う。だからまだ良い。でも魔力はだめでしょ。完全にアウト。何SSSって。最高はSじゃないの?……ってよく見たら僕の成長限界全部S以上じゃん。何してんのさ神様……」
この時僕は知らなかった。異常なステータスの原因が創造神以外の神にある事を。
「まあいいや。低いよりはましだし。これでぬいぐるみマスターだからって馬鹿にされる事は無いはず!」
異常なステータスをポジティブに捉えた僕は馬車に戻るべく祭壇を出た。
……誰も心配してなさそうだ。良かった、神様の言った事は本当みたいだ。
☆☆☆
馬車の中を母様のステータスを見る事で乗り切った僕は、屋敷に戻り遂に運命の時を迎えた(母様のステータスは父様の事を笑えない程魔術馬鹿だった)。
「それで、エキル。ステータスカードをもらってきたんだろう?俺とルルティカにも見せてくれないか?」
ルルティカとは僕の母様の名前だ。
「う、うん。分かった……」
僕は気が進まないといった表情をしながらステータスカードを取り出す。
「エキル。私達は貴方のステータスがどんなものでもちゃんと受け入れるから。安心して」
僕の様子を見た母様は優しい声で言う。
違うんです。違うんです母様…!別に悪い訳じゃないんです。むしろ良い方なんです。でも、これはちょっとやりすぎなんですよ!
「そうだぞ、エキル。エキルのステータスがどんなものでもエキルは俺達の息子だ」
ああ、父様まで!……もういいや。二人がそう言うなら見せよう。これで何と言われようと僕は何も悪くないのだから。そう腹をくくり僕はステータスカードを二人に渡した。
誤字脱字あったら教えて下さい




