3話 ぬいぐるみマスターの能力②
翌日。
僕は家族と一緒に教会へ行くため馬車に乗っていた。教会に行くのは勿論ステータスを知るためだ。
ステータスはステータスカードというものに記載されていて、その内容は本人、もしくは本人が認めた者しか閲覧する事が出来ない仕組みになっている。
「エキルのステータスか。楽しみだな!」
興奮しながら僕のステータスカードが来るのを待つこの人は僕の父、ザレス・キルガザ―ルだ。
前にも言ったように、父様は辺境伯、つまり伯爵の地位に就いている。伯爵は貴族の中でも上級貴族に分類される。王国の貴族は上から、大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵となっている。上級貴族は伯爵までで子爵からが下級貴族となる。つまり、僕の父様は結構凄いという事だ。
あと、父様は剣の腕も王国の中でも上の方らしいが、クラスは【剣士】と普通の方だ。【剣士】の能力は剣の扱いが上手くなるというものだが、使い込むと身体能力を向上させたりなどの追加効果もあるらしい。
「父様。父様のステータスを見せてくれませんか?」
「ああ、勿論良いぞ」
父様ステータスカードをポケットから取り出し、僕に渡す。……父様。大事な物をポケットに入れるのはあまり良くないと思う……。
ともあれ、今は父様のステータスを見てみる事としよう。
名前 ザレス・キルガザール
年齢 33歳
クラス 【剣士】(レベル10)(剣を使いこなせる。常時、身体能力が1.5倍になる)【クラスアップ】(剣を持っている間、物攻、物防、敏捷が大幅に強化される)
スキル 剣術(レベル8) 格闘術(レベル7) 弓術(レベル6) 疾走(レベル6)(自身の速さを強化する) 硬質化(レベル6)(自身の防御を強化する) 剛力(レベル7)(自身の物攻を強化する)
魔術 風術(レベル5) 治癒術(レベル5)
生命力 AA(AA)
物攻 AA(S)
物防 A(AA)
敏捷 B(A)
器用 C(A)
精神 B(B)
魔攻 C(B)
魔防 C(B)
魔力 B(B)
ステータスの魔術やスキル、クラスは後で説明するとして、先に生命力とかの方を説明するね。
ステータスは生命力、物攻、物防、俊敏、器用、精神、魔攻、魔防、魔力に分かれていて、最高がSで、最低がGとなっていて、AのところだけA、AA、AAAと三つに分かれている。
そして、文字の横にある()はそのステータスの成長限界を表している。成長限界は人によって違うらしく、大体はクラスによって左右されるらしい。
つまり、僕の父様は典型的な脳筋という訳だ。
ちなみに、王国の平民のステータスの成長限界は大体がDやEらしく、良くてもCやBで、Aなどは滅多にないんだとか。まあ、貴族は平民と違って訓練とか受けるし、平民を守る貴族が弱かったら国がまとまらないし。父様のステータスは当たり前といえば当たり前なんだけど。それにしても物攻と生命力がAAって……。器用さとかも伸ばそうよ……。
じゃあ次。スキルやクラスなどについて。まず、クラスはその人自身が持っている職業みたいなもので、7歳の時に授かってからは一生変える事は出来ない。クラスは最大レベルが10までで、レベル10までいくとクラスアップというものが出来る。クラスアップとは、クラス自体は変わらないがクラスの性能が強化される事である。……まあ、軍人とか騎士とか冒険者とか、そうゆう人じゃないとレベル10までいかないんだけどね。
じゃあ、スキルと魔術について。スキルと魔術もクラスと同じで、最大レベルが10まである。そして、この世界では1~3までが初心者、4~5までが一人前、6~7までが達人、8~9までが名人そして10が極めし者という区分になっている。……まあ、だから。父様はスキルから見ても脳筋という事だ。
「なんか…凄いね……」
「はははっ!そうだろう、そうだろう!俺は凄いんだぞ!」
父様は大声を出して自慢する。それには母様も苦笑いだ。
「凄いけど……偏りすぎじゃない?」
「ぐふっ」
流石に息子からの指摘は効いたみたいだ。これで少し改善されるといいけどね……。
「母様。母様のステータスも見せてください」
「良いわよ……と言いたいところだけど、教会に着いてしまったからまた後でね」
母様の言葉に僕は少し残念に思う。が、後で見せてもらえるんだしいっか。とすぐに立ち直る。
「……そうですね。では行ってきます」
「ああ。行ってこい」
「行ってらっしゃい。エキル」
僕は馬車を降り、父様と母様に別れの挨拶をすると昨日来た教会の入り口を目指し歩く。
さて、これでぬいぐるみマスターの使い方とかがようやく分かるのか。使い方は昨日分かったけど、どんな効果かは知らないからな。そこら辺を知れると良いな。
馬車を降りてから2分ほど。教会に着いた。
「今日は前みたいにならないといいな」
前、とは勿論昨日の事である。
僕はそんな事を思いながら祭壇に上がる。その瞬間僕の意識は途切れた。
☆☆☆
目が覚めた。周りには誰もいない。しかし、今度はちゃんと憶えてる。つまり二度引っ掛かる事は無い。
「神様。もう分かってますから姿を現してくださいよ」
「ちぇっ。二度目は通用しないか。もう少し楽しみたかったのに」
残念そうに言いながら神様は姿を現した。
「時間は有限、なんですよね?今度は心配かけたくないので手短にお願いします」
「分かった、分かったから。そんなに急かさないでよ。せっかくお茶を用意したのに」
「別に急かしてませんよ。ただ父様達を心配させたくないだけです」
昨日は一時間も経ってから目を覚ましたみたいだからね。今度は早く戻らないと、フィアが泣いてしまう…!
「……君。結構なシスコンだね」
「シスコンで結構です。…それで、いつ終わるんですか?」
フィアを守るためなら僕は魔王ですら倒せそうだ。無理だけど。まあ、だから、僕はそれくらいフィアの事を思ってるって事。
「やっぱり急かしてるじゃないか。まあ安心しなよ。昨日と違って今日は時間の流れを早めたから」
「ん?それってどういう事ですか?」
「そのままさ。この場所にいる限りこっちでの一分は向こうでの一秒になる。だから、一時間くらいいても向こうでは一分しか経ってない事になる」
最初っからそうしてくれれば良かったのに…。僕は不満を頭の中に仕舞い込み、話題を戻す。
「それで、ステータスの事はどうなんですか?」
「まあまあ、落ち着きなって。取り敢えずお茶でも飲もうよ」
神様がそう言うと、どこからかテーブルと二つの席のセットがポンッと音を立てて現れる。そして、神様が手を振ると、今度は二つのティーカップと温かいポットが現れる。匂いからして中身は紅茶のようだ。
「ささ。座ってゆっくり話そうよ」
神様は僕を笑顔でお茶会に誘う。
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