プロローグ
二作目です。よろしくお願いします!
目が覚めると僕は知らない場所にいた。
そこは真っ白で、明るい場所だが他に何もない場所だった。
僕はそこに浮いているような感じがした。
「ここはどこだ?」
僕は自分の記憶を辿るが、それらしきものは見つからなかった。だが、
「何故か僕はここを知っている」
いや、正確には知っている、というよりも来たことがある。そう僕は感じた。
いつだ?いつ僕はここに来た?
そこまで考えた所で、頭に激痛が走った。
「いたっ!?」
そして、思い出した。ここにいつ来たことがあるのか、何故僕はここにいるのか、僕が何者なのか、を。
僕には前世の記憶があった。日本という国未来湊という名前だった頃の。
僕は交通事故に遭い、そして転生した。この世界の名前はユニテッド。
ユニテッドには日本から転生、転移してきた人が何人かいるらしく、マヨネーズなど、ユニテッドの技術で作れるものは大体普及していて、作り方も知れ渡っている。
「……ここは、転生する時に来た場所だ」
僕は一瞬死んだのかと疑ったがそれは無い。何故なら、僕の心臓は確かに動いているからだ。前に来た時は動いていなかった。つまり、僕はまだ生きている。
では、何故だ?何故僕はもう一度ここへ来た?……少し前までの記憶を探ろう。
そこで、僕は真実に辿り着いた。
今日は僕の、7歳の誕生日であり、この世界では、7歳の誕生日にクラスを授かることになっている。
クラスについてはまた今度話すとして、とにかく、僕は今、クラスを授かるために教会へ来ているはずだ。
「まとめると、僕は死んでなんかいないし、今からクラスを授かるだけだ。なんで前世の記憶が戻ったのかは知らないけど」
「正解ッ!」
僕が結論を口にすると、どこからか子供の声が聞こえた。それから数舜、僕の前に7歳の僕よりすこし背丈の高い子供が現れた。
「うわっ!?」
僕は突然の出来事に驚き間抜けな声を上げた。
「やあ、久しぶりだね。未来湊くん。…今はエキルシード・キルガザールくんだったかな?」
子供は明るい声でかつ、フレンドリーに話し掛けてくる。
その瞬間僕はこの子供が誰なのかを思い出した。
彼は、僕を転生する時にいた神様である。僕が転生する時は結構周りに人がいたけど、この神様は目立ってから覚えていた。
「……どっちでもいいです。あと、フルネームで呼ぶのやめて下さい」
未来湊の方はいいんだけど、ユニテッドの名前はフルだとどうも慣れない。エキルシード・キルガザ―ルって、なんかチャラくない?(個人の意見です)
僕が転生したのは、ユニテッドの三つある大陸のうちの一つ、ロイゼット大陸にある、エタール王国という国の、南の端、エンペスト帝国との国境に接している、キルガザ―ル辺境伯領領主、ザレス・キルガザ―ル辺境伯の長男だ。
ちなみに、エタール王国の名前は家名が後ろで名前が前に来る。そして、家名があるのは貴族のみ、更に家名と名前の間にもう一つ名前があるのが王族だ。
「じゃあ、エキルくん。君は凄いね!」
「ど、どうしたんですか?急に」
僕は急に褒められたじろぐ。あまり、誉められるのには慣れてないんだよね。
「いきなりあんな状況にされて、あそこまで考えられるなんて。ここに来た人の中で君は一番落ち着いていたよ」
「はあ……」
あれでもパ二くってた方だけどな。
「てか、ここに来た人の中でって、もしかして、クラスを授かりに来た人全員にやってるんですか?」
僕はここを知ってたから何とかなったけど、普通の人だったらどうなるんだ?
僕の心は恐怖よりも好奇心が勝った。
「いやいや、見込みのある人だけだよ。僕もそこまで卑劣な神じゃないからね」
神様は大げさに首を横に振る。
「え、でも、さっき落ち着いていられたのは僕だけって……」
それって、僕以外のここに来た人は……。
「さて、エキルくん。君の家族が待っている。時間は有限なんだ。早く事を済ませよう」
ごまかされた。僕は心の中で犠牲になった人たちへ祈りを捧げ、神様に聞いた。
「僕が授かるクラスはもう知ってるんですか?」
「さあ、どうだろうね?ユニテッド僕以外にも神がいるからね。どの神が君に恩恵を与えるかでクラスは変わる」
僕はどの神様が恩恵を与えてくれるんだろうと妄想を膨らませと、僕の周りに幾つかの魔法陣が現れる。
「!」
僕はついその魔法陣に警戒してしまう。
「心配しなくていいよ。これは儀式の始まった証拠だ。あと少しだからじっとしててね」
僕は言われた通り警戒を解き、魔法陣を眺めながらじっと待つ。
そして、一つの魔法陣が光ったかと思うと、全ての魔法陣が一斉に輝き、刹那、僕の右手の甲を痛みが襲う。
「いたっ!」
僕は思わずしゃがみ込み右手を押さえる。
「ごめんごめん。伝え忘れていたよ。…それで、儀式は終わったよ、押さえてる手を離してごらん」
僕は言われるがままに左手を離すと、右手の甲に王国を象徴とする紋章が赤くに輝いていた。
「それはクラスを示しているものだ。さあ、僕にも見せてくれ」
僕が手の甲を神に向けると、さっきまでにこにこしていた顔から笑みが消える。
「どうしたんですか……?」
「あ……、ごめんごめん。久しぶりに見た紋章だからつい」
僕は珍しいクラスなんだ、と胸を躍らせた。
「それで、これは何てクラスの紋章ですか?」
「……それはね、ぬいぐるみマスターというクラスの紋章だよ」
神様は少し言うのを躊躇い、そして言った。
「……え?」
僕の思考が止まる。
「聞こえなかったかい?ぬいぐるみマスターだよ」
神様はクラスの部分を強調して言う。
……え?ぬいぐるみ?そこまで思考を働かせた所で、僕の顔はみるみるうちに赤くなっていく。
ま、まさか……
「これも伝え忘れてたけど、儀式をする際に趣味とかは神に伝わるよ。クラスに関わるからね」
うがああああーーーーーーー!!
最悪だ!この紋章をつけてたら僕は、ぬいぐるみが好きですって公開してるようなもんじゃん!
誰だよ、こんなクラスを僕に授けた神様は!
「ち、ちなみに、このクラスの能力は?」
能力が強ければ文句なども言われまい。……あまり期待できないけど。
「そのままさ。ぬいぐるみを使役する能力だよ」
「それ、強いんですか?」
めちゃめちゃ雑魚そうなんだけど……一応聞いてみた。
「さあね。クラスは持ち主の生き方によって変わるからね。……まあ、このクラスは特別だけど」
「え?」
最後の方は聞き取れなかったため、思わず聞き返した。
「いや、こっちの話さ。気にしなくていい。それより、残念だがもう時間だ。また会えるのを楽しみにしているよ。エキルくん」
神様はそう言い残すと姿を消し、僕はそのあと意識を失った。
……次会う時は普通にいて下さい。
☆☆☆
「他人と関わる事を嫌い、ユニテッドが出来てから1500年弱。一度も恩恵を与えた事の無かった君が恩恵を与えるとは、どういう風の吹き回しだい?」
先程までエキルと楽しく話していた神は、クマのぬいぐるみを持つ少女に話し掛ける。
「………」
しかし、少女はぬいぐるみを持ったまま神の言葉に反応しない。
「はあ。別にいいけどさ。彼が恩恵を使いこなせなかったら、僕は彼を消すよ」
神は少女の反応にため息を吐くが、怒りなどの表情は見せない。
「……!」
少女は怒りをあらわにするが、すぐに落ち着くと神に近づき、神の耳元で言う。
「あの人は私が守る」
その言葉には強い決意が込められていた。
「へえ。破壊神にそこまで言わせるなんてね。本当に興味が湧いてきたよ。果たして君から彼を取ったらどうなるかな?」
神は楽しそうに、また面白そうに笑みを浮かべる。
「その時はあなたを殺して世界を破壊する」
少女は神を睨みつける。
「はは、怒らないでよ。興味本位で言ってみただけさ。やる気はない。僕だって破壊神を敵に回したくないしね」
「………」
少女は無言に戻る。
「でも、一つ言っておくよ。ユニテッドの住人に神が干渉するのは許されない。君が何をしたいのかは知らないけどこれだけは守ってくれよ」
神は少女に釘を刺す。
「……分かった」
少女は神の言葉に頷く。
「その言葉が聞ければひとまずは安心だ。僕も彼には興味がある。君が手を出さない、もしくは彼が暴走さえしなければ僕は温かく見守るよ」
神はそう言い残しその場から立ち去る。
「お兄ちゃんなら、大丈夫……」
一人になった部屋で少女は呟いた。
☆☆☆
目が覚めると僕は祭壇にいた。つまり、僕は帰って来たのである。
「お兄様~!」
まだ意識がはっきりしない僕に、妹のフィアは泣きながら僕の胸に飛び込んでくる。
フィアはまだ小さい体だが、それは僕も同じこと。あまり変わらない体格の相手にぶつかられると、つまりは普通に痛いのである。
「どうしたんだ?フィア」
すると、フィアはむすっとした顔をする。
「一時間も姿を消せば心配もします!」
なんと。10分やそこらだと思っていたが、僕はあそこに一時間もいたようだ。
「そうか、心配してくれたのか。ありがとう」
僕はフィアの頭を撫でる。
フィアは嬉しそうに顔をほころばせる。
……やばい。これいくらでも撫でられる。
僕はフィアの嬉しそうな顔を見ながら撫で続けるが、教会の入り口で父様と母様が待っているのに気づき、撫でる手を止める。
「さあ、フィア。向こうで父様と母様が待ってる。行こう」
僕は泣き止んだフィアに手を差し出す。
フィアは小さな手でそれを掴み、満面の笑みを咲かせる。
「はい!」
この時、ぬいぐるみマスターでも僕はこの笑顔を守ろう、と心の中で固く誓った。
誤字脱字があったら教えて下さい。