少女達の奏でる夢想曲
「ギューフ!とうとう押さえたのじゃ!」
カトレアは開幕早々、元気よく言った。
「押さえたって…何を?」
「会場じゃよ」
ふふん、と褒めて褒めてと、ドヤ顔をしている。
「…なんの?」
ドテーッとカトレアはコケた。なんて古典的な。
「やるんじゃろ!?オーケストラ!」
あぁ、そういえばそうだった。
「それで、場所は?」
「ふっふっふっ」
凄く、笑っていた。
場所は見晴らしの良い広場。
路上ライブとなった。カサブランカ姫に頼んだらきっとすごい所を用意してくれただろうが、俺達にはそれは重い。だから丁重にお断りしてきた。
楽器の準備をする。
もう、俺たちは普通の人。大した力も無い。
でも、精神だけは、人並み以上の力がある。
あぁ、きっと、俺達なら大丈夫だ。
時間になった。人はまばら。
丁度いいとも言える。
「では、聞いてください」
俺達は楽器に手をかける。
そう、それは親を失った少女の話。
そう、それは変わる事を恐れた少女の話。
そう、それは猫を被った少女の話。
そう、それは美しい世界を守ろうとした少女の話。
そう、それは主人の遺志を継ぐ少女の話。
そう、それは姉を想った少女の話。
そう、それは誰にも見て貰えない少女の話。
その一つ一つにかけがえのないものが詰まっている。
そんな一つ一つの物語を、少女達は奏でる。
「夢想曲」