大天使ケトラ
「私は…ケトラと名乗っておきましょうか。私の権能について軽くお話するので聞き逃さないでください」
キリッとアルテミスの方を向く。
「私はある程度時間を操れます。でも、自由自在という訳ではありません」
右手をスっと下ろし、手を開く。
手のひらに時計の模様が浮かび上がり、私達の周りの時間がゆっくりになる。
「この権能を使ってアイツを足止めします。…ごめんなさい。倒すことは出来ません。なんとか、時間を稼ぎます」
ケトラさんは目をご主人様の方に移します。
「いいですか?宝珠の力を込めた魔力は本質的にMFと大差ありません。あなた達のMFを彼にぶつければ…干渉する事が可能かもしれません」
そして、もう片方の手をカトレアとベゴニアさんの方にかざすと…
「…なんじゃこれは…」
宝珠の力が湧いてきました。
「ケトラ…あなた…眠っていたんじゃ…」
ベゴニアさんはそう聞きます。
「そうね、ベゴニア。少しお話しましょうか」
すると、優しい目を、ベゴニアさんに向けます。
「私は周りから意図しない形で大天使になった。周りが認めちゃえば大天使になる、それは掟。大天使になった事で魔力のバランスが崩れ去って、意識を一時的に失ったの。でも、お姉ちゃんが近くにいたから…私は意識を取り戻して、ただただ、安静にしていたの。ずっと、ずーっと、お姉ちゃんを見てた。ありがとう。お見舞い、何度も来てくれて」
この人の中でベゴニアさんはとてつもなく大きな存在。あぁ、だから忘れるはずも無い。見えなくなるはずなんて無いのか。
「さぁ、長くは持ちませんよ!早く!」
私達は手に魔力を込めます。
それぞれの、思いを乗せて。