決まりきった選択肢
ここはどこだろうね?ま、今はそんな事、関係無いか。
「アンスール…アンスール…?」
遠くで誰かが私を呼んでいる。
「あ」
「げ」
アーチュとばったり出くわした。
その時、声の主が姿を見せた。
アセロラお姉様…
私とアーチュはそちらに駆け寄った。
2人とも、両手を広げ、迎え入れるアセロラお姉様の方へと飛び込む。
手を…握りしめる。
簡単に言えば、握り拳をつくる。
「もーすこし」
「マシな変装したらどうだ?」
メキィッ!!
2つの拳が、アセロラお姉様に似ても似つかない誰かの顔にめり込む。
「いいかい?私達は彼女を既に見送った。私はそんな事されても、何ら嬉しくないよ」
虚空に話しかける。
空間が割れた。
妾は…何を?
思い出す。徐々に記憶が蘇る。
ここは…冥界かの。妾が住んでおったところ。
ふと上を見上げる。
平和な世界が広がっていた。誰もが笑い合い、誰もがキャッキャウフフしている。
「ふん、この程度で妾を騙そうと?」
妾はよく知っている。よく、学んだ。
「こんな見せかけだけの平和、妾が望むと思うか?」
世界が早くも終わりを告げた。
私は…?
「お姉ちゃん!」
ギュッと妹が抱きついてきた。
「私ね!コンクールで銀賞取れたよ!」
彼女の所属する合唱部が銀賞を取ったらしい。彼女は指揮者だ。きっと、この上なく嬉しかったに違いない。
「よくやったね」
私は彼女を褒める。頭を撫でる。
「えへへぇ」
照れくさそうに笑う。さて、幸せな時間はこれくらいにしないと。
私は、既に知っている。きっと、本当の幸せはこの世界には無いことを。
「アルミスタ…」
私の親友の名を口にする。私にはもう…彼女のいない世界はありえない。
ごめんなさい。また…会えるといいな。
「私は、別の世界を望んでいます」
世界が、音を立てて割れた。