神出鬼没道化師
「はぁ…」
勢いで飛び出してきてしまった…。リタにも悪い事したな…
「おや、随分な落ち込みようだねぇ。見ていて滑稽だよ。」
「あぁ、そうなんだよ、実は…!?」
「はは、急に警戒されて、困っちゃうね。記憶喪失は本当のようだ…。」
目の前にいたのはゴスロリ黒髪ロングのスタイルのいい少女
「何者だ!あんたは!」
「私かい?佐藤…いや伊藤だったか…いや待て磯貝かもしれん…」
「ふざけているのか…」
「おやおや、そうカリカリなさるな。もちろん、殺意を込めたその顔も大好きなんだがね」
「もう一度聞く、誰だ、お前は」
「私なんか誰だっていい。名前なんてどうでもいい。私は私だ。人を惑わす事が大好き、面白い事が大好き、焦る顔が大好き、殺気が大好きな私だ。やはり覚えていないのか」
「あぁ、さっぱりだ」
「そうかそうか、あの一晩の事も忘れたのか、あれは激しかった」
「!?」
「はっはっ、いい顔をしてくれるねー。大好きなんだ、そういう焦ったか・お。もちろん、冗談だが」
「からかっているのか、俺を」
「あぁ、もちろん、その通りだね。私は道化。言ったろう?人を惑わすのが大好きだと」
「…用件は…?」
「んー、べっつに何があったわけでも、無かったわけでもないからねー。強いて言えば、確認、かな。生存確認。」
「は…?何が言いたい…いったい何者なんだ」
「おっと、質問は一つずつだよ。前にも教えたじゃないか…いや、忘れてるか。出来れば私の事は忘れていて欲しいものだけどね」
「お前、何を言って…」
「おっと、お仲間さんの迎えだ。私はここで退散するとするよ」
「おい!待て!」
「ふふふ…やだね、私はあんたの事も周りの奴らも大嫌いだからね。」
「じゃあ何故会いにきた!」
「嫌い嫌いも好きのうち、と言うだろう?」
「ふざけるな!結局お前は何者なんだ!」
「そうだね、私が一方的に状況把握しすぎても不公平だ。私は…黒猫とでも呼んでもらおうか。情報屋黒猫。あの子の好きな人とか、あの子のスリーサイズまで、欲しい情報言ってごらん?なんでも売ってあげるから。あっでもまた今度ね」
「おい!待て…」
「おーい!ご主人様ー!?」
リタの声だ。とりあえず謝っておかないとな。
「すまんリタ。少しショック受けてただけだ。悪かった。」
「うわぁーーーん!!ご主人様ーーー!すいませんでしたーーー!!あのような事を聞いてしまいーー!腹を切る用意は済ませてありますのでーー!」
「いやいやいやいやいや!待て待て待て待て!!切らなくていい!生きててくれ!!」
「全くもう…お互い様ですよ…」
頬を膨らませるリタはとても可愛らしかった。
「あらあら〜」
「トレーズさん、すいません。突然飛び出して…」
「いえいえ〜構いませんよ〜。ところで、ここで何かありました〜?」
「いえ、何も…」
咄嗟に嘘をついてしまった…でも何故?
「あら、そうですか〜、良かったです〜ご無事で〜」
「すいません、心配かけて…」
「全く〜リタちゃん、泣きながら探してたんですからね〜」
「すいません…ホント…」
こうして一度訓練所に戻るのだった。