アルミスタの世界
ここは、何処だろうか。
今まで何をしていたのだろう。
私は思い出そうとする。すると徐々に景色が色をつけ始めた。
「ねぇイデアル、午後は一緒に遊ばない?」
アイリスだ。そっか、私は彼女と仲良くなったのか。
「えぇ、そうね」
私は笑みを浮かべ、返事をする。
「さぁ、立ち上がるのです。今こそこの国をより活性化させる時です!」
外ではカサブランカ姫が演説をしていた。
彼女が指揮を執ると、国はたちまち大国と化した。軍事兵器だったり、麻薬などは使っていない。
至って普通の外交で、至って普通の内政で、彼女は勝ち取ったのだ。
私とアイリスは午後から優雅に紅茶を飲む。昔は飲めなかった紅茶も、今だと美味しく感じる。
「でねでね!」
話は絶えることは無い。彼女といると、とても楽しい。
「誕生日は何貰ったの?」
かつて、私は上手に答えることの出来なかった問い。しかし、今の私はすんなり、言葉が出てくる。
「今年はピアノを買って貰ったの。音楽も徐々に楽しくなってきてるわ」
私は、そう答える。創ったり、偽ったりしていない声。
「まぁ!羨ましいわね!」
アイリスはそう答える。
「今度、ピアノ見にお邪魔してもいいかしら?」
アイリスはそう聞いてくる。
「えぇ、もちろん」
私は笑顔でそう答えていた。
帰宅する。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
何人かの使用人が私を出迎える。
「お帰り、イデアル」
階上から母が声をかけてきた。
「ただいま、お母様」
そう言うと、母は手を仰ぎ、
「もう、様付けなんてやめてよね、家族なのだから」
そう、照れくさそうに言った。
いつもの光景だ、と、私は思った。
廊下を歩く。習い事は好きなことだけを続けている。親から許可もおりた。
今は美術、音楽を中心にやっている。剣術など、物騒なものは性に合わなかったようだ。
ふと、廊下から外を見る。
この国は、綺麗に色付いている。
私はその向こうが一瞬、気になりかけた。
しかし、私の頭が見ることを拒絶した。
その、色のない世界を見ることを。
「イデアルー?」
母が呼んでいる。
私は、この幸せが続くことを選ぶのだろうか。