冥土の土産
私はここまで順調でした。大天使をあっさり操れて、その部下までもが釣れて、怖いくらいに。
あぁ、楽しい。そう思っていたのに…。
大天使ケトラの就任…。へぇ…。
まぁ、いつもの通りやれば問題は無いはず。
「そうよね、別に操れば良いだけの話」
私はケトラを探し、操るための術をかけます。
よほど精神力が強くなければ、この術を破ることは出来るはずがない。
「…!?」
切られた!?
かなり厄介な事態になりました。アイツは操れない…。幸い、まだ上位の天使で留まっている…。
もうすぐ、就任の儀が始まってしまう。
「…私は娯楽を提供する、それだけですよ」
私は、使い魔を放つ。私は知っている。彼女の権能の誤作動を。
彼女はここからいなくなり、そして、記憶もされない。
そんな事例を度々、見てきました。
彼女は強かった。けど、彼女はとても、脆弱だ。
妹を人質に取った。こっちはとことん、弱かった。
彼女は動かなくなり、心も壊れ、権能が誤作動を起こした。
私が何故彼女を覚えているかって?そんな事は簡単なこと。操った中に、記憶の消去などの術にかからない大天使がいて、それを見たから。彼女はいつか公表しようと、手記をいくつか取っていた。
私はそれを…破り捨てた。公表なんて、させるものか。そんな事したら収束させるという手間がかかる。
ケトラは私を除き、誰にも記憶されなくなった。ケトラは誰にも見えなくなった。
私は見事、邪魔者の排除に成功した。
その後、魔王がユルの進行を止めようと天界にやってきた。もちろん、過去に魔王が下界に降りる事例は度々あった。しかし、私は隠蔽した。
彼女を下ろして、不都合があった場合は面倒だ。私は面白くするためなら、なんだってしてやる。
その後、とぼとぼ歩く魔王の背を見送る。
あぁ…
「最高…」
凄い快感だ。あのねじ伏せられた時にだけ見せる姿。私の力を実感出来る…!
そのせいで、警戒を怠った。魔王が下界に降りた。こんな事出来るのはケトラしかいないだろう。
その後、魔王が天界に戻ってきた。ギューフとかいう人間と、おそらく、ケトラと思しき天使を連れて。
私は彼の過去を見た。彼はおそらくユルを打倒しかねない。彼の過去を見て、私は確信した。
あぁ、私は大丈夫だ。
彼に力を与えたのは、ケトラ。彼女が大天使になる事はもう無い。
私は勝ったのだ。既に、勝負は決した。