天界の現状
「…ここへ誘導したのはどうしてだ?」
アーチュが聞く。
「言ったでしょう?退屈だったんです。ちょうど、遊び道具がゾロゾロと遊ばれに来たので」
ふふ、と笑う。
王宮や、奴隷商本部でかき集めた宝珠は一人一つ。ユルに宝珠の製造を依頼したら快く引き受けてくれたが…作れなくなっていた。
それは他の誰が、同じ方法でやっても同じ。集めることの出来た宝珠はそれだけだった。
「ま、そうですね。ここまで来てくださったお礼に、いくつか答えを教えてあげましょうか」
アルテミスはそう言ってクスクス笑い、
「冥土の土産ってやつです」
嫌な笑みを浮かべ続けている。あの時のユルの表情そっくりだった。
「私は用意周到ですからね。色々な驚異を取り除いてきたんですよ」
おそらく、アルテミスの目的はユルの勢力の拡大、愉快犯だ。
「ユルの勢力が広がれば、人間は醜い争いをさらに繰り返す。私はそれが面白くって、たまらないんです」
こんな奴が大天使。とても信じられない。
「周りは当然各々が止めようと動きました。それはもちろん、大天使も」
淡々と、声色を変えることもなく。
「あんなヨボヨボの奴らに何が出来ると思います?せいぜい部下に命令することくらい。そんなの折ることは簡単でした」
手を回したのだろうか。
「私の権能を使って大天使を操ることくらい、訳ないです。大天使さえ操れさえしてしまえば、その部下もまた操れる…!あやつり人形を操ってやっただけなんですから」
そして、少し苦虫を噛み潰したような顔をして
「しかし、予想外の事態が起こりました」
そして、再び笑みを浮かべる。
「大天使ケトラの就任です」