いざ、出発
船の操縦はいつもの通り、声帯の分からない骸骨、ヴォーチェに任せっきりだ。
みんな、それぞれの決意を胸に、決戦場所へと向かっている。
「ねぇ、ベゴニア?」
アルミスタがベゴニアに話しかける。
「大天使ってどんなの?」
確かに、天使との区別も付かない。詳しく聞くためにも聞き耳を立てておく。
「大天使は天使の中でも魔力の高い者が選ばれる…いわゆる所の首脳ですね」
なるほど、そんな話は確か聞いた事がある。
「大天使は12人。それぞれがそれぞれの役割を全うし、天界の秩序を守る、という表向きの構想の元で成り立っています。まぁ、実際、前の世代がやってたから、というのが1番強い理由ですけど」
サラッと凄いことを口にした気がする。
「大天使は就任時、権能を1つ授かります。魔法じゃ到底造れない建造物を造るとか、永遠に尽きない魔力とかです」
便利だな、大天使。
「ベゴニアの権能ってなんだったの?」
「あー…私は就任直前になり損ねたので…分からないんです」
「…ごめん」
「いえいえ」
アルミスタとベゴニアの会話を聞きながら少し考える。権能…MFみたいなものだろうか。
「ところで、アルテミスの権能って何か分かる?」
ベゴニアは少し黙り
「アルテミスは、人格の乗っ取りを行います。意思の弱い人間とかは簡単に乗っ取られてしまいます」
かなり有力な情報が手に入った。なるほど、ユルはそれに操られていた、というわけだ。
アルミスタは話してくれたベゴニアに1つお礼を言って、その場を離れる。
大分地面が見えなくなってきた頃、
「…来たか」
天界と…こちらに向かってくる謎の魔物の群れ。
「使い魔です!警戒してください!」
「はぁ!!」
一閃。一瞬にして、敵が散り散りになる。
「皆の者!剣を持て!私が先陣を切る!我らが切り札達に出番を作らせるな!」
声高らかに語るのは、一国の王様だった。