リタの扱い
時は少し前に遡る…。
リタの部屋に逃げ込んだその日、俺は一夜をリタの部屋で過ごした。同衾はもう慣れた。
カランコエはカランコエで、きっと元気にやっている事だろう。
「スー…スー…」
隣でリタは規則正しい寝息を立てていた。
幸せそうな寝顔…とはとても言えなかった。
「パパ…ママ…」
寝言で呟く。胸が締め付けられるような気分になる。
「ダメだダメだ」
思わず感傷的になってしまう。今はとにかく、元気な姿をみんなに見せてなくてはいけない。
彼女達の幸せを願う者として、俺が幸せそうにしていなくてはならない。
そのまま俺の意識は、深く、深く沈んでいった。
集合まで、残り3日。早いものだ。
さて、これからどうしようか…。
とりあえず起き上がる。
「ふぎゃ」
「あ、悪い」
俺の上に乗っかっていたリタを落とす。本人曰く、ここが暖かくて引き寄せられる、だそうだ。
いつものように、朝起きて、朝食を食べて、行動を開始する。
「ご主人様ご主人様」
リタがトテテテテと駆けてくる。そんな風に走ったら…
「ふぎゃッ」
やはり転んだ。それでもめげずに駆けてくる。
「どうした、リタ」
リタの目は輝いていた。
「ここ!行きたいです!」
「ほぅ、コスモス畑…とな。懐かしいのぅ、あの花畑を思い出す」
「きゃぁ!」
リタは尻もちをついた。いや、つきそうになった。
それをコウモリの如く上から顔を覗かせていたカトレアが支えた。
「危ないのう、気をつけるのじゃよ」
「あ、ありがとうございます…」
騙されるなリタ。今のはどう見てもカトレアが驚かしていたせいだ。
と、このようにリタの扱いにはみんな、慣れてきた。
「それじゃ、3人で行くか」
「うーむ…」
カトレアが悩んでいる。
何故だかとても、嫌な予感がした。