ダメなご主人
「では、今日は散歩しましょうか〜」
「天気も良いですし、良いですね」
「私も付いていっても…?」
「リタは俺の専属メイドだろ?付いてこないでどうする」
「はい!ご主人様!」
「あらあら〜」
こうして今日は家の周りの散歩。何やら紹介したい場所があるようで…
トレーズさんが背中に触れてくる。
「えっと…何か…?」
「いえ〜綺麗な背骨だな〜と」
「は、はぁ…」
訳が分からなかった…
※
「紹介したい場所はここです〜」
「えっと…ここは…?」
「なんでしょう…?」
「ここは訓練所。身を守る術、戦う術を学んでいただきます〜」
「なるほど…」
※
「いらっしゃいませ。トレーズ様」
深々と頭を下げる受付の人。俺らは眼中になしか…。
「ご主人様、とても残念そうですけど、どうかなさいました…?」
「いや、別に…」
別に受付の人が美人で、声かけてくれたら嬉しいなー、とか思ってない…ない…よな…?
「…ハッ…!まさか…」
やっべ…思ってない思ってない…
「私が転ぶ所を期待してるんですか!?ふっふっふ…今日の私はいつもと違うのです!いつも以上に入念に足元をチェックしてヘブッ!!」
ビタン!!痛そう…こんな石造りの床に顔を叩きつけて…
「ヘッブ…ヒッグ…痛いよぉ…」
「全く…目をつぶって人差し指立ててドヤ顔するからだ、ほら」
「うぅ…ご主人様、ありがとうございます…」
手を引っ張ってやる。涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ…さすがに石畳は慣れてなかったか…
※
「おぉ、よく来たな。歓迎する、トレーズの新しい保護対象。」
「全く〜保護対象なんて言いかたしてはいけませんよ〜、家族です〜」
「あぁ、そうだったな、すまない」
「分かれば良いんです〜」
「で、私達を呼び出したのはもちろん、あれをするのだろう?」
「あまり気は乗らないのですが…」
「出たよ怠惰の権化…」
並んでいるのは3人のお姉さん方。
「安心してくださいね〜、この人たちは優しい方々なので〜」
「え、えぇ…で、何をすれば?」
「あなたには今から能力テストしてもらいます〜ではまず、剣から〜」
手渡されるのは鉄製の剣。
「では、これを切ってください〜」
目の前に置かれたのは岩。斬れるわけない…。
「ええい!ヤケだ!ドゥあおりゃあああ!!」
ガキンッ!!刃が刺さる事は無かった。
「んー…不適正〜」
ピッピッ
側からでもバツマークが付いたのが分かる音。
「次は弓〜」
「えぇい!」
ビュイイン…
「飛距離50センチメートル…不適正〜」
ピッピッ
「次は銃〜」
「やあぁ!」
バァン!
「うん、的から1メートル離れて着弾〜向こうに的が見えました〜?不適正〜」
ピッピッ
「最後ですね〜魔法〜」
「どうやるんだ…これ…?」
「雰囲気でなんとかしちゃってください〜」
「…あぁ!!もう!!一つくらい適正あるはずだ!なら!なんとかなる!
…魔法陣よ、我の声に応えよ…サンダー!!」
スンッ…
白けすぎて弱風が吹いた程度…魔法というか阿呆…
「はぁ…適正無しですか〜残念ですが仕方ないですね〜」
「…すいません」
「ご主人様!私銃に適正あるって言われました!ご主人様は!?ご主人様はどうでした!?」
今戻ってきたリタが元気に結果報告に来る…
「ダメなご主人でごめんな…」
「えっ!えぇっ!?ご主人様はダメじゃないですよ!適正が少なかったりしても、適正あるもので戦えば良いんです!手札で戦ってこそですよ!」
「…ごめんな…適正…無かった…」
「えっ!えぇっ!?すいません!ご主人様の気も知らず!!どうか私めに罰を!罰をぉ!!」
リタが励ましてくれたのが分かって、そこは少し元気が出た。