帰る場所
景観重視の道を行く。アネモネはご機嫌で外の景色を眺めている。
かく言う私は浮かない顔を必死に隠そうと、頑張って笑っていた。ダメだなぁ、私。
結局旅の目的は何一つ達成されなかった。ここまでズタボロだった。むしろ清々しい。…いや、清々しかったら素直に笑えているか…。
結局私はお姉ちゃん達の力を借りないと、何も出来ない…のかな。
果たして、こんな私が、覚悟のしっかりしてるみんなと一緒にいても、良いのだろうか。
いや、分かっていたことだ。良いはずがないのだ。
やがて、馬車が止まった。どうやら到着したようだ。
「やぁ、おかえり。旅はどうだったかな?」
町長が門から出迎えてくれた。
「まぁ、まずまずでした」
心にもないことを言う。アネモネは私にベッタリではあるが、今回の旅の成果からすると、それもイマイチ納得がいってない。
私は結局、この子のために何もしてあげられなかった。何も、変えてあげることが出来なかった。
そもそも私が誰かを変えるなんて、おこがましいことだと、もっと早くに気づくべきだったんだ。
「ようやく許可を取れたんだ」
許可?なんの?
「カランコエ、キミはこの街で暮らす権利を得たんだよ。町役場を家替わりに使うという許可を取るのは中々に大変だったが」
そっか、町長は私の帰る場所を用意してくれたんだ。
「アキレ…失礼、アネモネと一緒に暮らす事も出来る。キミはここで永住する事が出来るんだ」
そっか…うん…
「悪い話では…無いですね」
そして私はボソリと呟く。
「何も成せない無力な私じゃ…力不足…かな」
王宮。そこには既に色々な人が集まっていた。
ギューフ、アンスール、アーチュを筆頭に、リタ、アルミスタ、カトレア、ベゴニア、アイリス、カサブランカ…
他にもユルとの戦いで付いてきてくれた兵隊だったり、魔物の軍勢だったり…
「来てないのは…ロベリア、アントス、カランコエ…か」
アンスールはこの3人が来ないのは予想していた。特にユルとの戦いの後のアントスには不審な思いが多々あった。彼は酒を呑んでいたのだ。
それは、天変地異の方が起こりやすいと言えるほど珍しい事だった。
カランコエに関しては迷っているのは知っていた。来ないとしたら、きっと自分なりに決意したのだろう。
「それじゃあ、作戦概要説明を…」
ダンッ…
扉が勢いよく開いた。
「遅くなってごめんなさい」
扉の前で仁王立ちする姿。
「私も、参加するわ」
それは紛れもなく、カランコエだった。