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少女達の奏でる夢想曲  作者: まぐろどん
21章 彼女の選択 カランコエ編第3部
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過去のトラウマ

夜が開ける。私は呑気に旅をしているが、明明後日、王宮に集まるかもしれない、という事を考慮に入れなければいけない。王宮まで、約半日か。…今日は旅を続けて…明日1度故郷の村へと戻って結論を出そう。

「どこか行きたい場所とかある?」

一応、アネモネに聞いてみる。

「んっとね…やっぱりお姉ちゃんと一緒なら何処でも!」

やっぱりそうなるか…

「近くに遊園地とかあります?なるべく子供向けの…」

はいよ、と言って馬車を出す。

ゆらゆら揺れて、風が心地いい。

「ほわぁー」

アネモネは外の風景が流れていくのを楽しんでいる。


着いた遊園地は子供向けジェットコースターとかのある、いかにも子供向け遊園地だった。

「乗りたいのはある?どれでもいいよ」

私はアネモネに言ってみる。

「お姉ちゃんが乗るやつ!」

やっぱりそう来たか…ここは攻めてみよう。

「私もアネモネと乗れるならどれでもいいかな」

アネモネは急にアタフタし始めた。おそらく、決める、という選択自体初めてなのだろう。

「えっと…えぇっと…」

アワアワとして、パッと目についた物を指さした。

「あ、あれ!」

それは一際目立つ、船の形をしたアトラクション。ポセイドンとか、バイキングとか言うやつだ。


「ひいぃぃぃやあぁぁぁ!」

中々強烈。

「う、う、う、…うあぁぁぁ!!」

子供向けのアトラクションじゃないってこれ!いや、まぁ、なんというか…

「ひいぃぃぃ!!」

この遊園地の中でたぶん1番怖いと思う。


アネモネも降りてくる。

「ふらぁ…」

千鳥足でこちらに寄ってくる。

そして、抱きついてくる。少し、目が湿っているように感じる。よっぽど怖かったのかな?

「とりあえずベンチにでも行こっか、ね?」

コクリと頷いた。


ベンチに座る。

「ひっく…うっく…」

まだ泣いている。私、私よ、どうすればいいの、この状況。

「え、えっと、ほら、たまにこういうのもあるから、ね?」

フォローになっているのか…?これ。

「…ごめんなさい…ごめんなさい…」

すると、予想に反し、唐突に謝りだした。

「えっと…アネモネは悪いこと、してないよね」

私は急に焦りだした。どうしよう。

「だって…私…間違った選択しちゃったから…」

あぁ、なるほど。それで罪悪感でも感じているのかな?

すると再びギュッと私に抱きかかる。

「ごめんなさい…!もう…もう間違えないから…!何処にも行かないで…!見捨てたり…しないで!」

周りの視線を一点に集めた。

「そんな事しないから、ね?ほら、落ち着こ?」

優しく頭を撫でる。私は勘違いをしていた。この子はこの子なりに売られたことを気にしていたんだ。ケロッとしていたんじゃない。遮断していたのだ。

なんとかアネモネは落ち着きを取り戻し、2人でコーヒーカップとか、メリーゴーランドとかゆったりしたものを中心に色々と回った。最初はあまり元気は無かったが、徐々に不安も薄れ、元気を取り戻した。

帰宅日前夜。この日は少し奮発してホテルに泊まる。柔らかいベッドとかにアネモネは、大はしゃぎだった。

そうして、私は聞いてみた。

「ねぇ、明日なんだけど、お家に帰る予定だったんだけど」

最後に、私は聞いてみた。

「最後にもう一度ここ行きたい!っていう場所はある?」

私の旅の目標の1つ、アネモネの自我の確立。ここで何処かを答えてくれる事を私は期待していた。

「んっとねぇ…」

心臓が凄い速度で脈打っている。

「お姉ちゃんとなら、何処でも!」

あぁ、そうか、私はようやく理解した。

この子は猫を被っていない。猫を被った自分しかいないのだ。猫の仮面の下に、顔なんてものは無い。

「そっ…か」

いや、違う。たぶんこれから顔は形作られていくのだろう。そう願わずには、やってられなかった。

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