置いてきた者の様子見
皆との話し合いが終わって、私は1度国を出る。
「みんなは凄いなぁ…」
私だけだ。優柔不断なのは。
ガタガタ…
馬車に揺られ、空を見る。空はあんなに晴れているのに、気分は晴れない。
「はぁ…」
ため息1つ。
「どうかしたのかい?お嬢さん。家出?」
私は首を振る。
「んー…探し物、でしょうかね」
おじさんは首を傾げ、操縦に集中した。
そう、探し物。私がかつて置いてきたものを、様子を見に行くだけだ。
目的地に到着した。街はすっかり変わっていた。凄く賑わっている。
それもそうだ、今日はお祭り。昨日もお祭りだった。奴隷となって売られていった子達が帰ってきたのだ。中には連れ去られたという人も居るのだろうが、私は知っている。この中の大半は、自らの意思で子を売ったことを。
「ま、いいか」
世の中には知らなくてよかった事など沢山ある。
「ラヴィニャ…か」
ダメだダメだ。ネガティブな思考が頭の中を駆け回る。楽しもうとは思わないが、負の感情だけに流されないようにしないと。
私は向かった。街の奥にひっそりと建つ一軒家へ。
コンコン
ノックをする。返事は…無い。
「旧名、ラヴィニャです。入ります」
ギィィ…
建付けの悪い扉の軋む音。
扉を開くと、蜘蛛の巣が出迎える。
出迎えご苦労。と言いたいところではあるが、ズカズカと無視して家に上がる。土足なんて気にしない。
一通り見て回る。家具とかはそのまま残されていた。
…やっぱり誰もいない。人の住んでいた形跡こそあれど、長年放置されているような状態。
…引っ越した?家具を置いて?うーん…
ヤバい商売にでも手を染めた可能性の方が高そうか。
とりあえず玄関の前で座って待つ。
くうぅ…
お腹の虫が泣く。街の屋台で何か買ってこようかな…
そう思った時だった。
人影が見える。念の為、弓を手に持つ。
「ま、待ってくれ!怪しいものじゃない!」
両手を上げ、何もしない、との構えを取る。
「き、キミは、元々この家の子かね?」
「…はい、不本意ながら」
その男は優しげな笑みを浮かべる。
「そうか、お帰り」
そう言って、手を挙げたままこちらに歩み寄る。
「私はこの町の町長をしている者だよ。もしかしたらこの家の子も帰ってきているんじゃないかと来てみたら…案の定のようだね」
悪意は見受けられない。
「色々と事情を説明しようか。とりあえず町役場まで着いてきてくれるかい?」
私はコクリと頷いた。