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少女達の奏でる夢想曲  作者: まぐろどん
19章 ユルとの決着
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絶望

周りの空気は一変した。さっきまで見えていた星は見えなくなった。闇はユルの姿を隠していく。

呆然と、全員立ち尽くす。みんなの表情からは絶望が隠しきれていない。

外郭には傷一つなく、とても強固に見える。

「ま、紛い物よ!こんなの!」

カランコエが弓を構え、放つ。

「サンダーアロー!」

雷を纏った矢はユル目掛けて一直線で飛ぶ。

しかし、その矢はユルにすら届かない。

「ボーダー」

アルミスタが結界を貼る。

「ご主人、ユルの周り、凄い魔力が流れてる…!ただの風じゃない…!」

魔力で起こる突風はカランコエの風とは比べ物にならない。

「ならば!押し通るまで!デザイン!」

アーチュは龍を創り、ユル目掛けて突進させる。

ゆっくりと振り返り、腕を振る。

ガシャアァン!!

龍は粉々に砕かれる。

「くっ…」

ユルがのそのそと動く。

「どうシタ?もうオワり?」

とても流暢とは言えない言葉が聞こえる。

ここにいる全員の魔力を合わせれば勝てるのか…?いや、見れば分かる。不可能だろう。宝珠は残り3つ。俺が異形になれば…!

「ダメです!ご主人様!変なことは考えないで!」

リタの声が響く。考えていることはお見通しだった。

「そうは言っても…!」

分かってる。こんな言葉はリタは望んでいない。これ以上喋るとみんなをさらに絶望させる事になる。

「満足…シたか?」

ユルがこちらに向かって話す。腕を胸の前に持っていき、魔力を込める。

周りの魔力を全て凝縮したその魔力球はとてつもないエネルギーを持っていた。

「絶望に…シズめ」

魔力が全体に放たれる。

「なっ!」

アーチュに触れた魔力は大きく開き、檻のようになる。魔力は宙に浮き、ユルの近くへ飛んでいく。

幸い、外傷は見られないが…。

「ギューフ!気をつけろ!あれは精神を蝕む!当たったらMFは使えない!」

黒猫はそう言い、回避に専念している。

「次は…オマえ」

黒猫の周りを魔力の球が囲う。ネズミ1匹すら通らない。

「黒猫!」

「良い判断だ!」

呼応を使ってここまで飛ぶ。しかし

「…!!」

俺の左側から魔力球が迫っていた。避けれない…!

「ギューフ!」

黒猫は俺を庇い、魔力球に触れる。

次々と、みんなが捕まっていく。

「…魔力ギれ…」

ユルがそう呟いた時、その場にいたのは俺1人だけだった。リタも、カランコエも、アルミスタも、アントスも、ロベリアも、

「…える?…聞こえる!?」

頭の中に声が響く。出発前に通信機を渡されていた。この声はアロエだ。

「あぁ…」

ホッと息をつく。

「いい?すぐにその場を離れて。今の状態じゃ無理よ。少なくとも、あなた1人で勝ち目は無い!」

「…」

確かに、被害を考えれば逃げるのが妥当か…。もしかしたら、またチャンスは訪れるかもしれない。

でも…

「…はあぁ!」

「ちょっと!?」

突っ込む。ユルに向かって。

「そんなんじゃ!前と何も変わらない!みんな、俺を信じてくれているんだ!ここで逃げるわけにはいかないんだよ!」

必ず成し遂げる。約束をしてしまった。

「ぐはっ!」

蹴りがとぶ。地面を無様にゴロゴロと転がる。

「逃げなさい!これは命令よ!」

「出来ない!」

立ち上がり、向かっていく。

「ぐあぁ!」

氷の壁で弾かれる。

「早く!早く逃げて!」

「…手放しちゃ…ダメなんだ…!」

剣を杖に立ち上がる。

ノロノロと進む。

「さァ、アキラめたらドウだ?」

「それは…」


「無理な相談だな」


肩をポンと叩かれる。

「少し休め。最後のその時まで」

アントスがユルに向かって走る。ユルはそのままアントスに一蹴を入れる。

周りに血が飛ぶ。しかし、アントスの姿は無い。

「…アントス…?」


「あいよ!兄弟!」


空を舞っている。ユルの左腕がアントスに向く。そして、左手から炎が放たれる。

「お兄様!?それは本体ですのよ!?」

ロベリアが叫ぶ。確かに捕まったはず…。

「それなら大当たりだ!お生憎様…!体は丈夫なものでね!」

振りかぶった剣は、ユルを…捉えなかった。

代わりに

「今度こそ、助けたぞ。カランコエ」

カランコエの檻を打ち破った。

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