無敗の理由
「…うそぉ…」
この声を上げたのはリタちゃんだった。もちろん、俺が弱すぎたからではない。全敗だったのだ、10戦して
「…そうでした。よくよく考えたら私、負けなしではありましたが、勝ちもまたなかったです…」
初めてだったのか…少し悪いことをしたと思う。
「…約束は約束です!あなたの専属メイドということは、姉様に辞表を…」
なるほど、トレーズさんは姉様と呼ばせてるのか…
「いや待って!早まらないで!トレーズさんに俺の担当をさせてくれ、と頼むだけでいいから!」
「…そうなのですか?」
「あぁ、そうだ」
「なぁんだ、良かったぁ」
凄く安心しきった顔をする。こっちまで安心してくる。
「えっと、では、あなたのメイドですし、お客様…は違いますね。これからはご主人様と呼ばせてください!」
「あぁ、よろしく頼むよ、リタちゃん」
「…あのぉ…ご主人様、メイドなのですから、出来れば…その…………で…」
「え?なんて?」
「呼び捨てでお願いします!」
ガバッ
凄く早いお辞儀。俺でも見逃しちゃうね。
「…わかったよ、リタ」
「…はい!ご主人様!」
とても嬉しそうに笑うのだった。
「では、さっそくなんなりとお申し付けください!」
「じゃあ、今日はもう眠いから、消灯だけ頼む」
「承知しました!」
ココアとホットミルクの乗っていたお盆を持ち、電気を消し、部屋を去っていく。
ガサゴソガサゴソ
背中に何やら平らな感覚!
「…あのぉ…寝苦しいので出て行って貰えると…」
「ダメです、私はあなたのメイドです。…まさか、このまま私にフレンチなお願いを!?」
「だから、それをいうなら破廉恥…しないからな?」
「なぁんだ、残念です。ではおやすみなさい。」
「いや、寝苦しい…」
「すぅーすぅー」
寝息が聞こえる…このまま寝るしかないかぁ…