3つ目の塔
さて、塔が見えてきた…みんなもう塔の攻略開始してるのかな…。もしかしたら、もう終わってたりして。
そんな淡い期待を持ちつつ、塔の目の前。まぁ、とりあえず…
「ボーダー」
結界を張って塔内部の感触を確かめてみる。
「…?」
誰もいない…?いや、1人だけいる。
隣にいるカランコエは既に弓を構えている。何はともあれ、誰もいないのは好都合。
私の能力の特性上、仲間はカランコエだけにしてきた。全員の判別がつかないと、いつ結界から弾き出しちゃうか分かったものじゃない。
塔内部へ侵入してみる。やはり誰もいない。
「ここは立ち入り禁止なのだよ。そうそうに立ち去ってくれたら(面倒だし)見逃すけど…どうする?」
開口一番そんな事を言いつつ、1人の小柄な少女が降りてくる。髪はボサボサ、服をだらしなく着崩し、そこかしこに汚れが目立つ格好。
「面倒ならそっちが大人しく降参したら?」
カランコエが言い返す。
「…」
向かい合った少女は黙っている。考え込むように。
「…なるほど、名案」
そして納得した。
「…?」
そして何かおかしいと気づいたらしく再び考え始める。
「…???」
頭の整理が追いつかない様子。話が進まない。隣でカランコエがイライラしている。
「…さて」
少女は一言そう言う。
ピシッ…
「カランコエ!」
私はカランコエを押しのけ、その場を離れる。
ドンッ!
魔力による爆発。
「惜しかったのだよ…人はイライラした時、視野が狭くなる。キミは冷静だね。羨ましいよ」
少女は私を見る。その目はとても濁っているように、絶望しているように見える。
「…大丈夫?カランコエ」
カランコエの方へ寄る。
「ん…ありがとう、アルミスタお姉ちゃん」
とりあえず膝の擦り傷はあったが、自然治癒でなんとかなるだろう。というより、既にほとんど治っている。
「それじゃあ…手筈通りに」
「うん」
私が少女の方へと切り込む。最初の攻撃で分かった、この子は魔法専門。
「ボーダー」
結界を貼り直す。
ピシッ…
左へ跳ぶ。
ピシャンッ!
右から氷の柱が突き出てくる。
「…ふむ、キミは魔力の流れが読めるのか…」
少女は興味深そうに見てくる。
「さぁ?まぐれじゃないかしら?」
もちろん見えている。ボーダーによる探知もお手の物。
だいぶ近づいて来たものの、まだ剣が届く範囲ではない。そしてここからだと魔力探知しても反応すると微妙にタイミングがズレる。
でも、大丈夫。
「ウインド!」
追い風が吹く。一気に距離を詰める。
「届く!」
剣が胴を捉える。もう一押し…!
ガキンッ…
「人は勝利を確信した時が、1番弱いのだよ」
不味った。防具は想定に入れておくべきだった。
「救援に来られたらたまったものじゃないからね。ミイナには攻略を手間取らせるために、異臭を放つものを置いておいてもらったのだよ」
パキッ…
「…?」
少女が急に悶え始めた。よく見たら防具は見事に貫通していた。急所こそ外していたが、この痛みは辛いはず。
「サンダー!」
カランコエの雷が少女の背中を掠め、少女は気絶した。
…この剣、切れ味が良いというレベルでは無い気がする…。
何はともあれ、塔の攻略完了。さて、他の隊と合流しなきゃ。