硫黄の匂い
さて、塔が見えてきました。隣を歩くのはカトレア様。凛々しい…。
後ろには前方にはカトレア様の人望によって集まった魔物たち。
そのうちの1人がこちらに走ってくる。
「報告します!塔内部で何やら異臭を検知!どのように致しましょうか!」
「ふむ…」
考え込むカトレア様。凛々しい。
「毒性はありそうか?」
「それは分かりません…奴らは無臭の毒ガスですら作れることでしょう」
少しカトレア様が塔を見る。
「毒ガスなら塔内部の兵もガスマスクをつけるはず。ガスマスクを付けて侵入し、兵の様子を見て対処せよ」
カトレア様の的確な指示。もはや神々しい。
「はっ!」
一言言って、魔物は去っていく。
「さて」
内部では闘争の音がここまで聞こえてきた。
今頃どうなっているのだろう…。
「塔内部、粗方の制圧完了しました!残りは最上階のみです!」
仕事が速くて助かりました。カトレア様の顔つきがキリリとします。
「…行きますか、カトレア様」
「そうじゃの」
私とカトレア様は歩き出します。塔に向けて。
塔に入ると、確かに異臭がします。
これは…硫黄の匂い…。鼻を刺激する嫌な匂い。
「これは…」
その正体はすぐに分かりました。そこらじゅう、水分が飛び散り、少し嫌になります。
「…腐った卵の匂い」
なんてことありませんでした。ただの卵でした…
(この後スタッフが美味しく頂きました)
扉を開きます。
「やっほー!久しぶり!」
「…」
私もカトレア様も険しい顔になります。
「あれあれー?挨拶は大事だよー?」
ここからでも分かる威圧感。宝珠は既に使用済みのようです。
私達も宝珠は1つ渡されました。天界でアルテミスさんが使っていたように、私達にも効果はあるみたいです。
前回は透過する事でなんとか難を逃れましたが、今回は逃げることが出来ません。
「それじゃあ…はじめよっか」
ミイナは銃を取り出し、こちらへ向け、発砲します。
私が取り出したのは
「へぇ…」
刀。あれだけ特訓したのですから、もう遠近両用です。弾丸を全て弾き、距離を詰めます。
器用に銃でいなし、再び発砲。
寸でのところでかわし、再び距離を詰めます。
上段からの一閃。正面からの垂直攻撃をいなすのは至難の業。こちらに銃口が向かない方向で私の剣を止めます。私はすぐさま左手を剣から離し
「カルテット!」
魔弾を繰り出します。ミイナは後ろに飛び退き、魔弾の間を抜け、後ろへ。
「カトレア!」
「!?」
私はこの鍛錬中、剣の鍛錬しかしていない訳ではありません。
存在感を薄くする、それくらいの魔法は習得するのに十分な時間でした。
宝珠を使ったカトレア様の必殺技は見事にミイナを討ち取りました。
それも、ホントに呆気ないくらい。
「…チッ…人工物は…ダメかぁ…」
一言悪態を吐いて、彼女は倒れました。
…人工物。嫌な予感がします。
「妾達の勝ちじゃ。急いでカランコエ達の元へ向かうとしよう」
そう言ってカトレア様は再び歩き出します。私はその背中を追って、歩き出しました。