銃声
目が覚める。時刻は1時。
空は暗い。そう、午前1時。
引き出しを開けて、封印していた物を取り出す。
「よし」
一言、自分の体調を確認。弱気な私は、大分克服出来てきた。
雷はまだ少し怖い。他人に強くも言えない。でも、それも昔ほどじゃない。
待ち合わせの人の元に私は向かう。場所は国王の部屋。
取っ手に手をかける。急に呼び出されてどうしようか戸惑っていたけど…。
覚悟を決めて、戸を開ける。
パンッパン!
銃声!?咄嗟に戸を閉め能力の準備をする。
「アルミスタ!?」
ベゴニアが中から声を張り上げる。人質!?敵襲がいても警報装置は鳴らないのか!
若干扉越しにこぼれてくる火薬の匂い。
…応援を呼ぶか…?いや、やるしかない
バンッ!
扉を開ける。
「ちょっとぉ…せっかくクラッカー用意したのに…」
中には散らばったテープやちり紙。壁には豪華な装飾。中にいる人は、3人。
「まったく、こうなるからクラッカーはやめようって言ったじゃない!」
「まぁまぁ…ベゴニアだって悪気は無かった訳ですし…」
ここの所、変なことが立て続けに起こっていて、整理が追いつかない。
「あの…これは?」
ベゴニアに聞いてみる。
「何って、お誕生日会」
あー…あー?あー、今日だったっけ…?
「お誕生日、おめでとうアルミスタ」
そう声をかけたのは姫様だった。私に手渡しでプレゼントを渡してくれる。
「あー、誕生日忘れてるって顔してるー」
プンスカと怒っているベゴニア。
「ほら、今日はアルミスタの誕生日。覚えておきなさいよね」
そう言って、アイリスもこちらに寄ってくる。
よく見ると周りにはケーキや、ご馳走が並んでいる。とても4人分とは思えない。
「これ、3人からのプレゼントだから…」
ベゴニアはモジモジとそう告げる。
「…開けても…いい?」
「もちろん!」
3人が声を揃えて、そう言った。
丁寧に包装紙を剥がす。
「几帳面なんだね、アルミスタって」
ベゴニアは感心したように言う。
「…アルミスタ?」
おかしいな…反応が…出来ない…
なんか…前がよく見えない…
「大丈夫」
声は震えていた。涙が零れ落ちた。
私は、今まで誕生日プレゼントなんて貰ったことが無かった。私の、初めての、誕生日プレゼント。
優しい目で見守る2人と、心配そうに見つめる1人。
包装紙が剥がれ、中身が顔を出す。
「…これって」
立派な双剣だった。
「あなた、気づいてた?あの剣、錆が酷かったのよ。劣化も酷くて…」
姫様はそう言う。
取り出してみる。細心の注意をはらって。
見ると、刀身はよく磨かれ、錆1つ無くなっていた。
「まったく…」
私はボソリと呟く。
「誕生日プレゼントに剣って、物騒ですよ」
震えた声で、俯いたまま、そう答える。
「…ありがとうございます。絶対…絶対に、大切にします!」
顔を上げて、精一杯の笑顔を作る。零れる涙は止まることは無かった。
「さ、料理食べましょ!今日は私の所からも色々取り寄せたのよ!」
アイリスはそう言って立ち上がる。みんなもつられて、立ち上がった。
きっとこの日を、私は忘れることは無いでしょう。