雨に打たれて
目が覚める。空は真っ青、快晴だった。
日は既に高い。
徐々に昨日の記憶が鮮明になる。
『私』が勝負に勝って…たぶん安心して気が抜けたのでしょう。
体を起こす。全身がズキズキ痛い。
「クチュンッ」
頭もボーッとして…んー…。
熱があるかもしれない…額に手を置く。
「…冷たい」
体温は高いのに、額はなぜか冷たかった。
そして、湿っぽい…。
よくよく触れてみると、濡れタオルが置いてあった。とりあえず体を起こして、何かしらお腹に入れておかないと…。
体を起こし、布団をめくる。
「!!!!?????」
布団の中に人がいた。
「…ちょっとベゴニア…何してるの…」
「ん…んぅ…?」
目をこすり、起き上がる。
「んーーーっ!」
何事も無かったかのように伸びをする。
「あー、おはよー…」
寝ぼけているのか…?それともこれは夢…?なら一体何処からが夢で、どこまでが現実?
「さてさて…朝ごはん作っちゃうね…」
のっそりと起き上がる。それを呆気に取られた顔で見守る私。
とりあえず私もベッドから起き上がる。
「あー、熱あるんだから、まだ寝てて」
「え…でも…」
言い淀む
「いいからー」
そう言うとベゴニアは私を押し倒し、キッチンへと向かっていく。
状況の把握が追いつかない。そもそも、何処から何を考えていいのか分からない。
「お待たせー」
それにしても、ベゴニア、初めて声かけた時から随分口調変わったな…私に対して人見知りしなくなったのは素直に嬉しい。
なんて別のことを考えて思考放棄しておこう。
出されたのはお粥。生姜の香りが心地よい。
「ん…美味しい…」
食べる前に感想を言ってしまった!やばい!思考放棄した副作用が!
「もー、食べてから感想言ってよー」
そう言ってふくれる。するとベゴニアはスプーンを持って
「ふーっ…ふーっ…」
行動が読めない。ホントに今日のベゴニア読めない。
「あーん」
ホント読めない!分からない!何なのこれ!?たぶんこれくらいなら、姫が真顔で腹踊りした方が落ち着いていられる!
「…自分で食べられるから…」
そう言うと、ベゴニアはスプーンを少し下ろす。
「もしかして…距離感…間違えた…?」
涙目だった。ホントなんなの!?厄日なの!?
「いやいや!そんなことは無いって!あー、お粥食べたいなー!あーでも、力入らないなー!」
もう、どうにでもなれ。
ベゴニアの顔が綻ぶ。とてもご満悦のご様子で。
「もー、しょーがないなー」
体をクネクネさせている。たぶん、最初の頃は絶対見られない反応だった。
「はい、あーん」
「あーん」
口に含む。普通に美味しい。
「やっぱり美味しい」
ベゴニアは二パーッという、満面の笑みを浮かべた。今日はなんか表情豊かだなー。
お粥を食べ進める。もちろん、あーんされながら。罰ゲームか何かなのだろうか。
全部食べ終えると、ベゴニアは食器を下げて洗い物を始める。
「アルミスタ、熱あるんだから寝ててね。こっちは気にしなくても大丈夫だから」
洗い物の手を休めず、そう言った。
「…ありがと」
ベゴニアの顔がまた綻んだ。
寝るとしよう。体調は万全にして、明日からまた頑張ろう。私は姫に悲しい顔をさせる訳にはいかないから。
ゴソゴソ…
数分後、布団の中に変な感触があった。
…ま、いいか。