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少女達の奏でる夢想曲  作者: まぐろどん
18章 克服と、決意と、親友と アルミスタ&ベゴニア編第3部
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試練最終日 前編

約束の2ヶ月、最終日。

私はまだ1太刀も浴びせられてはいなかった。

空は生憎の雨。雷はまだ鳴っていない。

「さぁ、最終日ですが、どうしますか?諦めるなら私は一向に構いませんが」

カサブランカ姫は冷たく、挑発してくる。でも、私は知っている。彼女は1番に私を考えてくれていることを。

「まだ、あと1日残っているのでしょう?今日が、本番よ」

実際、昨日と一昨日は体調を万全にするため、少し訓練を甘めにした。

今日は体を目覚めさせるため、少し厳しめにした。

「まぁ、いいわ。どの道、2時間耐えればあなたを止められるのですから。諦めようが、続けようが結果は同じです」

木刀を構える。

「…ふぅ」

落ち着いて、一呼吸。雨で剣も見えづらいが、それはカサブランカ姫も同じ。

「…ふっ!」

地を蹴る。水が跳ねる。

最初の攻撃はとにかく早く。目の前に迫る。

予想通り鍔迫り合いとなる。姫に力で勝てないのは今までの勝負で学んできた。

少し力を入れてから…すぐに引く!剣はスライドさせる形で引き抜き、鍔迫り合いから脱出をする。

姫は予想通り、力を入れたタイミングで引かれて、少しバランスを崩した。それはほんの少しの綻びに過ぎない。それをスライドさせて加速させた。

ただ、彼女の身体能力を少し甘く見ていた。

次の一撃は横薙ぎ。ちょうど背中目がけて。彼女の剣は今の位置では絶対に届かない。

勝った…!剣はもう背中に触れる直前。

しかし彼女は身を身長の1/3になるくらいまで低くした。結局当たったのは自由落下途中の髪。

しかし彼女はその体勢で剣を振るのは無理と判断したのか、剣は振らなかった。そこで私は少し油断したのかもしれない。

突如、急激な足払いが炸裂した。元よりこれが狙いだったのだろう。跳んで避けるような隙さえ無かった。

私は当然転ぶ。

雨で地面が濡れていた事もあり、転びやすくなっていた。

でも、私は…負けたくない…!

手を着く瞬間、腕に力を込める。木刀を持った手はフリーにしておく。

そして、片腕だけで、自分の体を支え、持ち上げた。起き上がる直後飛んでくる横薙ぎを木刀で受け止める。

おそらく同じ手は通じないだろう。

私は剣を上にスライドし、鍔迫り合いの形から、上段の型へと移行する。剣道で言う所の面打ちの型。

そこから振り下ろすと、姫は頭を守るように木刀を横に、防ぐ。

私の弱点の一つであるスパン。悩むな。現状の最適解を最速で導き出せ。

このまま上段で連打した場合、先に力尽きるのは私の方。その隙に叩かれ、このチャンスは失うことだろう。だったら…!

私は剣に力を込める。押し込む。

私が力で勝てないのは同じ体勢の場合。ただ、彼女はミスを犯した。それはかつて使った剣が両刃剣だったからか、なんなのかは分からない。彼女の剣の支点は1箇所だけだった。

たぶん両端を握るように支点が2箇所ならば勝ち目は無かっただろう。ただ、1箇所の場合、勝機はある。ここから2箇所に移そうとすれば一瞬、剣を片手で支えなければならなくなる。その瞬間に打ち込めば勝てる。

「やあぁぁぁぁ!!」

叫ぶ。私は勝たなくてはいけない。ご主人を、守らなければいけない。

「負けるもんか!負けて…たまるかあぁぁ!!」

押し込む。力の限り。

「もう十分でしょう?あなたはよく頑張りました。今なら私の護衛というポジションも、用意しましょう」

姫は、最後に、私を試しているのだろう。

甘えたい、今すぐ、暖かい彼女の元で過ごしたい。

「…でも!」

私は力を込める。

「…私は決めたんだ…!」

パキッ…音がした。

「…ご主人を…!」

パキパキッ…音は徐々に大きくなる。

「…守るっ!例えそれが!痛くて!辛くて!苦しくて!甘えたくなったとしても!」

バキィッ

木刀が、折れた。

私の木刀は、ヒビが入っているだけで折れてはいなかった。

そして私の剣は、無事、カサブランカ姫に届いたのだった。

…さぁ、次はあなたの番ですよ。私。

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