表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女達の奏でる夢想曲  作者: まぐろどん
18章 克服と、決意と、親友と アルミスタ&ベゴニア編第3部
136/191

姫の願い

「…結局ほぼ一日中付き合わせちゃってるわね」

天を仰ぎ、寝転がりながらボソリと呟く。

時刻は既に10時30分。もう少ししたら中庭へと向かう。

「そうですねー」

ベゴニアも軽く返事をした。

「迷惑とかじゃ…ない?」

いつも不安だった。彼女は自分の訓練をしているようには見えない。

「そんな事ないです…もしかして、自分の訓練してないように見えてますか?」

心を読まれた…ドンピシャに

「…まぁね」

ふふ、とベゴニアは微笑む。

「甘く見られたものですね。私は毎日、何時間も自分の訓練してますよ」

そう言ってのけた。いったい何処で

「あなたとの訓練も言わば私の訓練ですから。魔法も使ってますし、いざという時の剣の訓練にもなります」

少し間を空け、再び語る。

「っと、まぁ、そう言えたらカッコイイのですけどね…実際、私は自分の訓練やってますよ。堕天しても天界とはいかずとも、そこに近しい場所になら立ち入る事が許されるのです。そこは時間がゆっくり進む場所。実質、私だけは時間がたっぷり残されているのです」

だから、と彼女は言う。

「私の心配より、自分の心配、してくださいね」

これは、負けるわけにはいかなくなってきた。


ある日、今日はアルミスタとの訓練を早めに切り上げた。アーチュが代わりに訓練を引き受けてくれるから、暇が少し出来た。

コンコン

ノックをする。そこは大きな扉の前。

「どうぞ」

平坦な、冷たい声。

「あら、あなたは…」

カサブランカ姫…とアルミスタは言っていたか。国王様だけど、姫様だった頃の記憶が強いのだろう。

「アルミスタのお守り、ありがとう。で、要件は?」

その目は隈が隠しきれていない。目に強烈なメイクが施してあった。夜に明かりの少ない場所で訓練するから気づかなかったのだろう。

「あぁ、そう。手を抜いて欲しいとお願いに来たのですか?お節介な事ですね。アルミスタに勝機は無いと悟りましたか」

もう1ヶ月と半分。3/4経過しているのだ。私はたまにそう願う事があった事も事実だ。

「いえ」

煽るような言い方を握り拳を強く握って我慢する。

「その逆です。訓練の時は手を抜かないでください。何があろうとも」

アルミスタには生きて帰って欲しい。その為に情けなんていらない。

「私のお願いはあなたにあります」

カサブランカ国王をじっと見つめ、震えそうな声をなだめ、緊張を落ち着ける。

「無理だけは、しないでください。それだけです」

国王の返答は、無言。イエスでも、ノーでもない。

私は踵を返し、立ち去る。

「では、お忙しい中、失礼しました」

「待って」

国王に引き止められる。

「もし、アルミスタが私に勝てなかったら、どうするの?」

この質問の意図はなんだろう…私が嫌な回答をしてそれをアルミスタに突きつけるのだろうか。

私は単純にこう答える。

「分かりません」

背中を向け、すぐに部屋を出られる体制を作り

「私はそんな事、彼女が諦めて膝をつくまで、考えないようにしていますから」

部屋の扉が閉まる。

分厚い扉から、小さく、こう聞こえた気がする。

彼女を…支えてあげて欲しい

と。

私の思い上がりか、勘違いかは分からない。私はいつか、カサブランカ姫とアルミスタがまた、仲良く話せれば良いと、そう願った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ