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少女達の奏でる夢想曲  作者: まぐろどん
17章 王宮攻略作戦 カトレア編第3部
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魔王の秘密

「ふふ…ふふふ」

ロベリアは嫌な笑みを浮かべている。表情からは怒りの感情が見て取れる。

「…何がおかしい」

カトレアは聞き返す。あたかも本当に分かっていないかのように。

「いえ、失敬。魔王がこのように頭の弱い方とは思わなかったもので…」

そして、小声でこう言い放つ。

「…そんな事なら、早く殺しちゃえば良かったのですねぇ…!」

カトレアの背後からロベリアの分身体が姿を現す。

「ふっ!」

すかさず付き添っていたアーチュが定規を振る。分身体は再び血に戻り、ベチャッと音を立てて崩れ去る。カトレアはロベリアの方をずっと見据えたまま立っている。アーチュの腕を信頼しているのだろう。

「チッ…」

ロベリアは1つ舌打ちをして、フラっと後ずさる。

「説明、して貰おうかの?」

カトレアは圧をかけるように言い放つ。

「当たり前の事ですわ!」

ガンッ!

ロベリアは背後の石壁を力一杯殴りつける。相当に怒り心頭のようだ。

「なぜ分からないのですか!?私の苦労が!痛みが!辛さが!苦しみが!」

狂ったように次々と言葉を吐き出す。この狂い方は初めて見た。

「勇者の血統には責任が伴います!その責任から兄は逃げたのです!魔王と勇者が一緒になれば魔王を倒すものが1人減る…それだけで如何に世界は混乱することか!あなたに分かりませんの!?」

「すまんの、分からぬ」

カトレアは淡々と、ロベリアの言葉を一蹴した。

「くっ…!あなたとは分かり合える気がしませんわ…!」

ふぅ、と一息ついたロベリア。怒りを抑えている様子だ。

「あなたとはやはりと言いますか、分かり合える気がしませんわぁ…そういう時は…血を見せ合うに限りますわねぇ…!さぁ…!共に傷つけ合いましょう…!」

アーチュが定規を構える。

「ねぇ、アーチュ?今回は魔王と一対一で戦いたいのですが…邪魔しないでくださる?」

ギロっと睨みつける。するとどこからとも無く複数の分身体が現れる。そして、その奥に見知った影を見る。

「…ユル!」

さすがに俺はアーチュに加勢することにする。あの数相手に1人で立ち回るのは厳しいだろう。

「あら、安心してくださいまし。あれも分身。見ものですわねぇ…本当に…!」

「すまない、カトレア。すぐに片付けて加勢しよう」

アーチュは向き直る。

「なに、こやつ単体、妾の敵ではない」

カトレアも向き直った。

「アントス、自由に剣を振るってくれ。お互い臨機応変に動こう」

「なるほど、それはそれは分かりやすい…こった!」

1番の得意分野。駆け出し、アーチュを信用して剣を振る。

「デザイン!」

壁が出来る。生成された時潰された分身も少なくない。

「多対1は不利なのでな。各個撃破しやすい地形にした。カトレアの心配が出来ないのが心細いが…」

「あいつは魔王だ。心配いらないだろ」

1人、また1人と分身体を消していく。

「咲け!カトレア!」

向こうは片付いた頃だろうか。

「やぁ!」

残るは物言わぬユルのみ。それもアーチュが押しに押している。

「トドメだ!」

首筋に強烈な一撃が入った。アーチュは定規を振るい、壁を崩した。

「…最高に…最高にエクスタシィを感じましたわぁ…!」

「…なっ…!」

目に入ったのは、倒れたカトレアと悦びを最大限体で表しているロベリアだった。

「ふふ…気づくべきでしたわね、アーチュ」

…どういう事だ?

「…くっ!そうか…ユルの分身体が居るということはユルに会っていた…警戒しておくべきだったか」

カトレアを揺すりながらロベリアを睨みつける。

「おい!しっかりしろ!カトレア!」

俺も必死になってカトレアを揺する。

「脈は…!」

首筋に手を当てる

「脈が…無い…?」

カトレアの脈は消えていた。他にも色々な場所を試したが、やはりダメだった…。

「くそっ…!私がもっと早く…!」

アーチュが涙を堪え、拳を地面に叩きつける。

「あらぁ?早く私と戦いませんことぉ?痛みを…感じましょう…!生きているという実感を…!」

「ロベリアァァ!!」

アーチュは我を失ったように走り出す。

「ん…んぅ…」

直後、有り得ない方向から声がした。

「あいたたた…ん?妾はどうなっておった…?」

キョトンと、何も無かったかのようにこちらを向くカトレア。

「ふぅ、案外早かったですわね…」

ロベリアは心底残念そうに肩をすくめる。

「言った通り…ですわよ。そして、見ての通り…魔王は一般人では殺せないのでございます」

遅くなりました!超不定期更新となります!ご注意を!

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