不安な香り
予め渡されていた携帯という物で黒猫に連絡を送る。
『件名,ヤバイ
本文,襲撃者って自己紹介したら丁重にもてなされた。どうすればいい?』
ピコン
送信してから約10秒、返信が来た。早ぇ
『件名,Reヤバイ
本文,知らん、警報鳴らないが、突入した方がいいか?それとも帰っていいか?』
おい、帰ろうとするなや。
『件名,Re Reヤバイ
本文,突入は待ってくれ。警報鳴るか、俺が合図を出したら突入で頼む』
ピコン
だから早えよ…
『件名,Re Re Reヤバイ
本文,帰っていいか?それとも帰っていいか?』
『件名,Re Re Re Reヤバイ
本文,サラッと帰ろうとするなや』
携帯を閉じる。世間一般ではガラケーと呼ばれている物を鞄にしまう。
王室の前。
「緊張するか?」
「不安しかないね。あんな悪者役やったのにもてなされちゃ」
アントスは苦笑を浮かべる。
「違いないな」
俺も苦笑する。
扉をノックする
「入れ」
「失礼します、襲撃者と申します。王位を譲っていただきたく参上いたしました」
馬鹿正直に言ってみる。さぁ、どう出る…
「はぁ!?襲撃者だと!?」
やった!反応がまともっぽい!
「これは失礼しました!王位ですね!どうぞどうぞ!他に必要な物はございますか!?すぐにご用意致しましょう!」
おい
「あぁ、横から失礼する。ちょっと聞きたいんだが」
流石に我慢が限界を超えた。ツッコミがいない…
「なぜ襲撃者をもてなす?なぜ簡単に王位を譲る?理解し難いのだが」
多分これで、人違いか何かを証明して…
「あぁ、失礼しました。いやなに、私としても王は続けたいのですが…暴れ馬の躾に困り果てて…ちょっと転職して天職に就きたいな、なんて」
そんな理由で王位って手放せる物なんですか?なんなんですか王位って…
「ささ、どうぞどうぞ、代わりの王を立てるならなんなり、ご自由にお使いください!」
王…もとい前王はそれだけ言うと王室から立ち去った。
「おい」
近くの兵士に声をかける
「今からこの城から人1人残さず全員立ち去らせろ。それが終わり次第、俺に報告。その後お前も立ち去ること。もし人が残っていたら明日お前の身体と首は別々の所にあると思え」
「ハッ!承知しました!」
兵士はそそくさと王室を去る
「えっと…作戦成功…?」