2人の必殺技
「くっ…!」
魔力防壁が破られる。幸い被弾は辛うじて2人とも無いが、防戦一方…。
「咲け!妾の花、カトレア!」
ドゥォーン…
「よっと…いやぁ、いい火力してるねー」
外す。先程から反応速度が異様に早い。
「あと、どれくらい持つかな?」
「カルテット!」
四方向から魔力弾が発射される。
「こっちは火力は少なめだけど、狙いは良いね!面白いよ!」
「チッ…外しましたか…」
押されている。流れを完全に持っていかれている。なんとか…なんとかせねば…。
「ベゴニア!」
「あれ、やるんですか?」
「あぁ、これでは埒があかん…」
「そうですね」
「わー!何やってくれるのかなー?」
今に見ておれ…
「咲け!妾の花、カトレア!」
「あれ?単調だねー、さっきからそればかりじゃん」
「カノン!」
「うわっと」
カトレアが発動した箇所で、またカトレアが発動する。
「蒼の陣!」
「うわわわわ…」
一面にカトレアが広がる
「ワルツ!」
「わーぉ…」
柱のように、カトレアが伸びる。
「紅の陣!」
「うむむ…」
魔法を発熱し、中の魔力の動きを活発化させる。
「カプリチオ!」
「…」
魔力が活発化した中で爆発が起きる。拠点近くで鍛錬中、ベゴニアと編み出した必殺技。暴走した魔物にも使った事があったが、細胞一つ確認できなかった。
「よし!直撃じゃ!」
「やりましたね!魔王…様…?」
「!?…おい!ベゴニア…お主!」
ベゴニアの腹部から赤色の液体が流れ出る。
「久々に楽しませて貰ったよ!さすがだね!天使と魔王は」
「何故…何故お主はそうもピンピンしておる…」
奴はよく見ると腕にかすり傷がある程度。
「…カトレア様、すいません…少し…動けそうにありません…」
「くっ…」
どうする…どうする…?
「私の事は…置いていって…くだ…」
「置いていけるわけが無かろう!」
此奴は妾の願いを身を挺して叶えてくれた。次は妾が報いる番じゃ、そうでなければ…此奴が報われん!
「んー、そろそろ話終わった?」
「逃げるぞ、ベゴニア。2人で。」
「すいません…魔王様…」
「お主、感謝じゃろ?そういう時は」
「…えへへ…そうでしたね。ありがとうございます、魔王様…」
ッターン
「お主、少し魔力借りるぞ。魔力鋼壁」
「2人分の魔力で魔力防壁を硬くしたんだね!とっても面白い!」
ッターンッターン
「くっ…!!」
「…背に腹は変えられませんね」
「お主、何を…?」
「大丈夫です。ただの魔法です。お気になさらないで」
「2人で何を話してるのかな?」
「時間がありません…私の手を握って、離さないで」
「こ、こうか?」
「フーガ!」
ベゴニアは術を口にする。何も変化は起こらない。
…否、ミイナの様子が変だ。
「…転移魔法…?天使の特権か何かかしら…面倒ね」
見えて…いない?
「一歩動けば魔法が解けますので、注意してください」
普通に声を出して話すベゴニア。
「この魔法は一種の結界を張る魔法です。相手に姿も、魔力も、声も、気配も気付かれませんし、聞こえませんし、見えません。しかも幽霊のようにすり抜けます」
「あー…マジ萎えるわー…ま、いいや。言い訳でも考えながらタピってこよっと」
ミイナが去っていく。
「ふぅ…なんとかなりましたね…」
「治癒の陣」
ベゴニアの止血をする。
「ありがとうございます魔王様、しかし、少し痺れが残っているので…おんぶしてもらっても良いですか?」
「うむ、構わんぞ」
「あ…でも、少し…お待ちを…ちょっと、後ろ向いてて貰って…も…?」
「うむ?」
急激に放たれる異臭。苦しそうに唸るベゴニア。ベゴニアは、嘔吐していた。
「…ごめんなさい、これが…これを使いたくなかった…理由です…」
「魔力酔いか何かの類か…?」
「いえ…少し…トラウマが…うっ…」
「…」
聞かぬが吉。妾の中で出た結論。
「少し待っておれ。魔力の反応も無い。おそらくこの城には妾とベゴニアの2人だけじゃろう」
「…はい、すいません…ありがとうございます」
「うむ…宝珠を取ったらすぐ戻る」
「はい…」
こうして妾は宝物庫へ走り、宝珠を無事見つけ出したのじゃった。残っていた宝珠は3つ。分からない所に隠しておいたのが吉と出たようじゃ。