2対1
「リタ、後ろに」
「やれるか?アーチュ」
「もちろん、遅れないでアンスール」
「言われるまでもなく」
「おや、最初から好戦的だな。分かりやすいのは好きだが」
「勝ち目は?」
「今なら勝率9割だろう。隠し球があれば別だが」
「君達の言う隠し球とは…例えばこう言うのとかかな」
「なっ!?」
その手にはキラキラとした宝玉のようなもの。
「なんなんですか?あれは…」
「理破りの宝珠…なぜお前が」
「ユル様から貰ったのさ。なんとしてでも止めてこい、ってね」
「チッ…どうする?アーチュ」
「…撤退しかないだろう」
「奇遇だね、同意見だ」
「逃がすと思うか?」
「逆に、私達に追いつけると思うのか?」
「ふん、荷物抱えて走るんだ。追いつけない訳がないだろう?投降したらどうだ?痛めつけるのは少しにしてやるが」
「アーチュ、作戦は?」
「プランAだ」
「了解。決めてなんていないがな」
「意思疎通くらい楽勝だろう?」
「あぁ、アーチュの嫌いな事は手にとるように分かる」
「奇遇だな、私もだ」
何やら凄い迫力…縮みそうです。
「そろそろお喋りは終わりでいいかな?」
パリィン
リグルさんは宝玉を割ります。
「まぁ、止めようがないからね」
「仕方なし、ですね」
「ぐっ…グアァァァァア!!」
リグルさんの身体を炎が、氷が、雷が、光が、闇が、他にも色々と纏わり付きます。
「やあぁぁあ!」
「モノ!トリ!」
アーチュさんは定規を構えて近接戦。黒猫さんは魔法で遠距離戦。
「はっ…この程度かな」
「チッ」
防がれました。あの強い2人が完全に。
「いいかい?アンスール」
「あぁ、分かった」
何が分かったんでしょうか…私には全く…
「モノ!」
「デザイン!ラビリンス!」
壁が大量に生成される。
「簡素だが、迷宮を作った。時間稼ぎには…ならないか」
ドォーーーン!
壁が壁として機能せず貫かれました。
「よし!今だ!アンスール!」
「はあぁぁ!」
「やぁぁぁ!!」
前後からの剣撃。黒猫さんは両刃剣を持っています。たぶん武器生成でしょうか。あれは避けれるはずがありません…
「甘く見ないで欲しい。ライト」
剣に光が灯ます。
「ふっ」
一回転して薙ぎ払います。
「くっ!」
「かはっ…」
アーチュさんは間一髪防ぎ、黒猫さんも防いだものの、背後の壁に激突。
「さぁ、投降するかい?」
黒猫さんの胸ぐらを掴みます。
「へっ、誰があんたなんかに…」
「ふんっ」
「かはっ…!?ケホッコホッ…」
お腹に強烈なパンチ。堪らず吐血。
「アンスール!」
「ちょっと黙っていてくれないか?それとも投降してくれるのかな」
「くっ…」
「大…丈夫…逃げろ…呼応で呼び戻してくれたら…なんとか…なる」
「なるわけ無いだろう!?誰かに掴まれている状態で呼応は発動出来ない!」
「シシ…大声で発動条件を言うんじゃ無い…」
「だが…!」
「なぁ、もういいか?」
「ぐはっ…!」
「アンスール!!」
ダメだ…黒猫さんを置いてはいけない…何か…何かヒントとなる事があるはず…何が…?
思い出せ、思い出せ…ご主人様なら…私を助けてくれたご主人様なら…何をする?
「リタァ!!」
「!?」
声を張り上げる黒猫さん
「キミが思う事をしろ!ご主人様がじゃない!自分が出来る事を、したい事を考えろ!」
「私の…したい事…」
「うるさい」
「ガッハ…」
私は…何をしたい?
パパやママに会いたい?…いいや違う。会いたいとは違う。私は…会いたいんじゃ無い…私は
「守りたい!全てを!みんなを!」
!?MFが発現した時と同じ感覚…今なら出来る!
…でも、水が無い…どうすれば…!?
何か…何か水の代わり…水の…代わり?こんな話…どこかで…
(『水の代わりにご主人様の血を?』
『妙案ですね!さすが私!』)
そうだ!これがある!
「黒猫さん!血をお借りします!ブラッドエッジ」
棘が出るのは、リグルさんの腕に付いた血から内側へ。
「つっ!」
リグルさんは手を離す。
「カハッケホッ…」
「チッ…よくもぉ!」
「ブラッドシールド!濃縮300倍!」
ガキィン!
「なっ…!」
凄く凄く小さな盾。誰にも切れない、小さな盾。
「今です!逃げますよ!」
「あぁ!殿は任せろ!」
「シシ…頼りにしてるよ、私の優秀な傭兵」
「無事で何よりだ、私の偉大なるご主人」
「逃がすかぁ!」
「デザイン!サヴァイヴドラゴン!」
「チッ…面倒な…!」
壁から4頭の竜。
「急げ!長くはもたん!」
「頼んだよ、アーチュ…」
こうして私達は命からがら逃げ出したのでした。