大陸移動
「あ。そういえば、ヴィリーオ国はニンゲンがいる国と大陸が離れているのよね。」
フィリアナはつぶやきながら走っている。
……分速100キロで。
もちろん、生身ではない。瞬足の魔術を使っている。この魔術は、風の速さ・身体強化などの魔術を合体させているフィリアナオリジナルの魔術だ。
この魔術はヴィリーオ国民でも、発動に1分はかかるが、フィリアナには1秒もかからない。
もはや、フィリアナは手足を動かすように複雑な魔術を使っている。
今のフィリアナを人が見たら、「ん?なんか風が吹いていた?」くらいの反応をするだろう。
ちなみにフィリアナが封印したのは、秘術や時間操作、死霊化などの危険な魔術である。
攻撃系の魔術は前の20分の1に抑えている。
「ギシシャャアアアア!!」
魔物がフィリアナに襲いかかった。
「えい!もう…静かにしてくださいまし!」
一瞬で倒される。しかも手刀で。哀れ魔物。
「やはり…歩きたかったのですが、しかたありませんね。送ってもらいましょう。」
ふぅと妖しくため息をついたフィリアナは一つの笛を吹く。
〈ピュイーーピューー〉
澄んだ笛の音色が森中に響く。
すると、バサッバサッと黒い影が近づいてくる。
『久しいな。我が友よ。』
その影は、巨大な龍だった。
色は光を飲み込むかのような黒。威厳にあふれるその風貌は見るものを圧倒させた。
『して、翼はどうした?』
「ああ、ちょっと閉じているんですわ。」
『ほう。なぜだ。』
「実は……」
フィリアナはかくかくしかじか、事情を説明する。
『はははっ!そうなのか。
よかろう。その…ニンゲン?がいる大陸まで送っていこう。』
「ありがとうございますわ。」
龍の名は、グラスラルドンラ。この森の主である。
フィリアナとは、茶飲み友達でよくお世話になっているのだ。
『行くぞ。しっかりと掴まれ。』
グラスラルドンラはさっきのフィリアナよりもさらに早く飛んでいく。
山を越え、海の上を飛んでいく。
「こんなに広いんですね…」
フィリアナも初めて見た海に言葉が出ない。
『あと1時間くらいだ。』
その間、フィリアナは日記を読み返している。
『☆月♪日
ヴィリーオ国以外には様々な種族が暮らしている。ここに種族について記す。
ニンゲン・数が多い。寿命は100年と短い。
エルフ・すらっとしたものが多く、耳が長い。
獣人・耳や尻尾がある。猫系~牛系まで、様々なタイプがいる。
ドワーフ・背が低く、ものを作るのが一番うまい。
など面白い種族ばかりだ。ぜひ、研究してみたい。』
「ニンゲンなんかに会いたいですわね。いや、獣人も良いかもしれない…」
『・・・くれぐれも人体実験はするなよ。』
「まあ、失礼な。」
そんなこんなで進んでいく。
『あれか。ほら、ここらで降りると良い』
「ええ、ありがとうございました」
フィリアナはついに新しい大陸についたのだ。
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