紅葉学園中等部行進隊同好会
放課後。僕は今日も彼らを眺める。
紅葉学園中等部。通称紅中。そこにはとある同好会があった。『行進隊同好会』。
彼らは毎週月曜日に校庭を借りて行進を行う。野球部やサッカー部からは苦情の嵐だがそれを意にも介さない。たった5人の同好会。
廊下側に面した校庭で、彼らは堂々と行進を行う。
――――
「こうしーん! 前へー、スルメ!」
「やっぱ王道のマヨネーズだろ」
「いやいや、炙りも捨てがたい」
「いいや。イカニンジンという手もある」
『それだ!』
「こうしーん! 耳向けー、耳!」
「じー」
「じー」
「ちょ、何だよお前ら。俺の耳がどうかしたか?」
『ピアスの穴空いてる!』
「こうしーん! 気休め―!」
「まあ、こんなもんだよな」
「俺たちにしちゃ頑張った方じゃないか」
「そうだよな。結果としては悪くない」
『はあ……』
「こうしーん! 後ろ向きー、後ろ!」
「やっぱ俺たちはだめなんだな」
「きっと一生……」
「お互いつらいな」
『ああ……』
「こうしーん! 前向きー、前!」
「ひゃっほうぉぉおう!」
「いえぇぇえええ!」
「俺たちの未来は明るいぜぇー!」
『バンザーイ!』
「こうしーん! その場でダイキ!」
「菊池大樹です」
「大田大輝です」
「根津大毅です」
『三人合わせて、”Daikiち”です』
「こうしーん! 尾張!」
「本」
「能」
「寺の」
『変』
「そこまでー。今回の点数はー、92点。記録更新ですー」
「やったな! おまけら!」
「誰がおまけか」
「ワシじゃ」
「ヌシか」
『我々か』
「追加点ー。93点ー」
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彼らは紅中行進隊。今日は記録を更新したようだ。