異界死神の奴隷王国
二年前に真面目に書いてたやつです。
黒歴史の開示。
人間はみんな生きている。だから自分の生を通して、死について考える。
僕もその一人だった。
病室のベッド。干物みたいになった手を見つめて、自分の死期を悟っている。
もうじき僕は死ぬ。
医者の言葉による説得力よりも、僕自身がそれを実感していた。身体のどこかに穴が開いて、そこから空気が抜けていくような感覚だった。
たった半年前。
夕食の時間に頭をつよく殴られたような眩暈を感じ、倒れた。
目を覚ますと病院にいて、調査の結果、僕はどうやら癌に犯されていたことが判明した……。
病院のベッドの上でそれを聞いた僕は、ふうん、と言葉を返すしかなかった。
一人っ子である僕が死ぬことがほぼ確定して(癌は複数の場所に転移していたので、手遅れだった)ただ涙する両親を見ていると、逆に僕は冷めた気分になった。
正直言って、僕は生きていたところでどうだっていい。
おそらくこの世界の人間は、誰一人として生きる意味など持っていないのだ。
もちろん僕もそう。僕と言う個人のレベルでは、僕の死は壮大な悲劇になってしまうのかもしれないけれど、僕が死んでも世の中は変わらないし、その悲しみは乗り越えることができる。
それからの半年間、最低限の延命措置だけを施しながら僕は死について様々な考察をした。天国、地獄、輪廻転生。死ぬときの痛みについて考えるのは嫌いだった。
僕には親しい友人などいなかったので、来る日も来る日も、生の向かい側にある死、ただ一点を見つめていた。
後悔することはあっただろうか?
そうだなあ。
一度くらいは、女の子とデートしてみたかったかもな。
クラスメイトでもテレビアイドルでもない、架空の少女を思い浮かべる。
君は僕が死んでも、僕のことを憶えていてくれるだろうか……?
彼女は困った顔をした。
そうだよな。
結局、人間なんて生きていなきゃ意味がないんだ……。
ふぅ。とため息をつく。
もう限界の時が近い。
天からの迎えが来ていた。
無機質なはずの病室に、林檎の樹が現れ、木漏れ日が僕を照らす。ベッドの上をリスが走り抜けた。
深夜の病室。
僕はこれから旅に出るような気分で読書灯を消して、眼を閉じた。
―――――グッバイ世界。
ほんとは長編にするつもりだったみたいですよ
過去の僕は……。