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-珍味って裂きイカだけじゃねぇから!-

老人は名をアイニジと名乗った。

コシャマインの名を受け継ぐ前に名乗っていた名でアイニというのは地名だそうだ。

それがどこを指すのか、実のところ本人もわかっていない。


「アイニジさん、アイヌは和人の城を攻めるんですよね」

アイニジはちょっと困った顔で、

「攻める。ということはもう決まった。というより一度攻めたのだ。結果はまぁ、惨敗と言っていいかもしれんかな」


惨敗…ですか。

あんな巨人みたいな奴がいても惨敗なのか。

城を攻めるってやっぱ難しいのか。


志苔館(しのりのたて)という城をこの間攻めたのです。攻めたといえば聞こえが良いが、実際には怒りに任せて押し寄せたと言えるでしょう。集まったアイヌ300人の若者の実に100名近くの死傷者を出したのです。こちらも弓で奮戦したのですが、箱のような城を囲む堀に落ちた者は射殺され、狭い橋から城門にたどり着いたものは無数の矢を浴びせられ門を突破することもできずに引き返したそうです」


そこでアイヌは勇猛果敢で巨人のコシャマインを盟主にして、他部族連合軍まで作って今にいたる訳だ。

連合軍は総数5000人!しかし、攻めるにしても和人の城の攻め方がわからない。


しかも連合軍は求心力を失えばバラバラになってしまう。

次の戦では負けるわけにはいかないが、男を無駄に死なせるのはどの部族もごめんこうむる。

つまり初戦での大敗が響いてしまって大義名分はあるのに士気は低いというわけだ。

自然崇拝の採取民族(狩りもやるけど)って戦うのに向いてないのかもしれない。


「う〜ん、負けられない戦いならやる気が大事ですよね。やる気出してもらえないと勝てないですよね」

難題だ。学校で戦争のやり方なんて習ってない…


とりあえず他の城を攻めてみるのは、どうだろう。いや、それも負けたらどうしようもないか。

悩んでいる俺を尻目に、アイニジは娘達に合図をした。

「今日は戦の話はもうやめましょう。まずは着替えて食事をとってください。明日は部族の長達にあなたを紹介せねばならない。早めにお休みになるとよいでしょう」


先ほどの服とは別に、客室でゆったりとした浴衣のようなアイヌ服に着替えた。

着替えたといってもアイニジの孫が勝手にやってくれた。任せる以外なにもするなと言わんばかりに滑らかな動きは一種の無力感すら覚える心地のよさで、これが女という生き物かと変なところで関心してしまった。


さて、着替えて居間に戻ると食べ物の心地よい匂いが食欲をそそる。


香草(アイヌネギ)と味噌少々をまぶした鹿の焼き肉

キノコのスープ(多分マイタケ?見たことないのも入ってる)

鮭の香草(タネツケバナ)焼き

蒸したじゃがいも

めふん(鮭の内蔵の塩辛)


模様の入った皿に木の碗で箸とスプーンまで、なんとも食べやすくて美味しい料理だろう。

じゃがいもがまた、鹿の焼き肉と合う!キノコのスープも出汁が最高にうまい!!!

「そのボリボリ(ナラタケ)は私が昨日採ってきたものでしてな。若いもんに採りにいかすとよく似た毒キノコを採ってきてしまうので美味でたくさん生えているのですが珍味なのですよ。もちろん毒味は済ませておりますのでご安心ください」


同じものを食べてを同じスープを飲むアイニジを見て安心した。

めふんに箸を伸ばした時、にごり酒が運ばれてきた。


20歳超えてないけど、、、この時代ならいいか。

程よい酸味と甘みっていうのかな、メチャメチャうまい。

酒は初めてなのに、なんて飲みやすいくて、、、そしてめふんと合う!


美味だ。うまい、床屋で読んだ美味しんぼを思い出しながら舌鼓を打って食べる俺をみてアイニジはとても嬉しそうだった。

アイヌって一言で言っても、実はたくさん分かれてます。

本土に定住したあと討伐されて追われたり、樺太から北海道のあちこちに散ったりして独自の発展を遂げたあと最終的に融合して『アイヌ』になったわけです。

日本人が県民性がなんだっていうように、色々あったのかなぁと想像しつつ書いています。

書くと長いから興味を持ったら自分で調べてみてね。

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