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-毒矢はすごいよ、ないと困るよ!むしろ毒矢がおかずだよ!-

あ〜痛ってぇ!


なんで死なないのに痛みは普通にあるんだよ!

--あははははっ!そのほうが面白いでしょ!--

なんて、なんて女だ…

-どうせなら、痛いのも平気にしてくれよ。こんなのドMでもやってられないよ!-

--まぁ、出血多量で死ぬことはないからいいしょ!あ〜腹痛い、最高だったわ今の--

血はすぐ止まる。前もそうだったけど、服が血でにじむくらいは出る。


アイヌが驚きに満ちているなか、痛みが取れてきた俺は血だらけで穴だらけの服をどうしたもんかと考える余裕が出てきた。

「穴だらけじゃん…」

前にキサラたちに射られた時の比じゃない。

30本くらいが体から抜け落ちてる。

こんなにも俺の体に矢が刺さったのか…


「コシャマイン!川の神の前に姿を表し給え!」

キサラ、、、

お前、マジ覚えとけよ。友達になりたいとか言っといて、煽りやがって…


前方の人影が、後ろを振り返りつつもゆっくりと割れていく。

十戒っぽい。モーザの十戒っぽいな。


数十メートル先から赤を基調にした民族服の教科書でみたことのある精悍な大男がこちらに歩いてきた。

デ、デカイ…

2m30cmはあるんじゃぁ、ないでしょうか…巨人です。

ぬぼっ、とした目が怖い…どえらい恰幅(かっぷく)のいい巨人だ。

まるでヒグマが人になったみたいだ。


「無礼をお許しください。コシャマインが川の神に拝謁いたします」

ん?

コシャマインは巨人なのに、まるで体を折りたたむように座り込み頭を下げた。

どういうことだ。展開に付いてけないぞ??


「川の神、コシャマインが(チセ)に案内いたします」

こちらへ、というように背を向け後ろを振り向く。

キサラが促され、付いていく。巨人の後をついていく。


しかし、芝居がかってるんじゃねえのコレ。


キサラの方を振り向くと笑っている。

お前、さては一芝居打ちやがったな。


コシャマインの家はデカい。あたりの家の3倍は軽くある。

「どうぞ、お入りください。川の神よ」

中に入ると、一人の老人が立ち上がり目礼した。


「コシャマインの父でございます。かつては私がコシャマインと名乗っていました」

背が小さい。

本当に親子かと疑ってしまうほど背丈(せたけ)が違う。


「あ、どうも。神川です」

「まぁ、お座りください」と薬湯を差し出される。まるで用意してあったのかのような手際のよさだ。


「実のところ、キサラから長老(エカシ)(レラ)が川の神をご紹介されるということでお待ちしておりました」

そうですかぁ、やはり、そうでしたか・・・薄々気づいていはいましたけどね。


「不死の身を持つという話、にわかに信じがたいと思ったが(レラ)は嘘をつく男ではない、しかし私は違っても皆は信じない。ということで誠にご無礼ながら同胞(ウタリ)達の前で試さねばならなかったのです」

なるほどねぇ。

「いやぁ、確かに矢でも毒でも死なないみたいなんですけどね。普通に痛いんで、こういうのはちょっとやめてほしいんですよね」

老人は笑いながら頭をポリポリかいた。

「信じないものに納得させたことで、あなたは真の生きたカムイだと皆納得した。これはお詫びの印ですが…」

と、見事な刺繍が施されたアイヌ服を差し出してきた。

そして、隣の部屋から5人の若い娘が下を向きながら、そそくさと老人の前に座る。

「いずれも生娘、わしの孫じゃ。我らの味方になっていただけること誠にありがたく思う。今宵はゆるりと休まれよ」


これは、つまり、、、ど、童貞卒業の大チャンス?!一気に5人と?しかも全員処女???

老人は見透かしたように笑い、

「ほっ、ほっ、ほっ、好色なカムイじゃ。夜伽の相手と思われたのかな?」

え・・・違うん・・・?

「身の回りの世話をと思ったのじゃが、川の神は好色なようじゃ。いやぁ誠に結構、結構」

娘達は顔を真っ赤にしている。


「もう名を息子に渡した身じゃ、しかし息子は力は強く勇気に溢れとるが和人との戦いには勝てんだろう。先の世から来たカムイよ。あなたの世ではアイヌはどうなっているかな?」

それは、また。。。正直に答えづらい質問だ。


「アイヌは、、、その、生き残って元気にやってみるみたいですよ…」

札幌の駅から大通りにかけて地下通路がある。そこで催し物をやっていたのを見た。

だから、嘘、、、ではない。


老人はそんな俺の態度で察したらしい。

「和人に土地を奪われましたかな。恐らくは我らの土地など残ってはいないでしょう」

「…まぁ、実のところ、、、そんな感じになっちゃいました」

自分が550年後からの世界から来たこと、アイヌのことは『先住民』と呼ばれ博物館で当時を振り返るような時代になっていることを語ると老人は寂しさの中に当然のように受け入れるような達観した顔を見せた。


「いずれは、そうなるかと思っていました。なにせ和人は土地を奪うために生きているようなところがありますから。口伝で聞き及んでおりましたが、海のむこうから渡ってきた先祖も和人に追われたものです」

老人は下を向きながら、話を続ける。

「結局、和人とは交易をして鉄を得ることができても作り方を教えてもらうことは叶いませんでした。我らを下に見ているのはわかっているのですが、和人のように字を使えるものが少ない。交易も都合のよいようにされてしまう」


うん、重い話になってきた。


「わしらは、自分たちの立場を守りたいのです。今回の戦も、アイヌの子を刺殺した鍛冶屋をお咎めなしにした和人に非があるのは明らか。同胞は怒りもそうだが、将来に不安を覚えて結束しているのです」


「な、なるほど」


「どうか、和人との戦いに手を貸してくだされ。あなたは和人とも聞く。我らにはない感じ方、考え方ができるはずです。なにとぞ我らをお助けください」


…長期的にアイヌ単独で勝つ、ことができないことを多分この老人だけがわかってるんじゃないかってくらい先の見通しがすごいな。普通に感心する。






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